2021年8月23日、韓国の8人組アイドルグループ「Stray Kids」(以下、スキズ)が2ndフルアルバム『NOEASY』をリリースした。KINGDOM優勝後初、約1年ぶりの本国活動、しかもフルアルバム…彼らが作り出す楽曲とパフォーマンスへの期待と、結果を出さなければならないという焦燥感。スキズのファンになってから迎えた3度目の本国カムバック。この数週間はなんだか単に「娯楽でアイドルを応援している」とひと言で言い表せない感情があったように思う。
そんな彼らが本日2021年9月3日に悲願の地上波音楽番組・KBS「Music Bank」(通称ミューバン)で見事1位を獲得した。1位を取ったスキズはいつもあまりにも嬉しそうに飛び跳ねるので、こちらも頬がゆるみっぱなしになる。
congrats to stray kids on getting their 3rd win with thunderous and first ever win on music bank!!⚡️#Thunderous3rdWin pic.twitter.com/AIR4eVznyt
— stray kids loops (@skzIoops) 2021年9月3日
金土日とある地上波の音楽番組の中では、男性アイドルグループがもっとも1位を取れる可能性が高いと言われるミューバン。しかしながら昨年の『Back Door』活動では、偉大なる業界の先輩であるBTSと1位争いをし惜しくも破れた。
私は昨年こんなツイートをしており、本日無事にトロフィーがスキズの手に渡るのを見届けることができた。
約1年前のフラグ、しっかり回収しました😎 https://t.co/OTJUIQb8vG
— aica⚡️ (@aica_skz__) 2021年9月3日
今回の相手は完全体で久しぶりのカムバックを果たしたSMエンタ所属のRed Velvet。大衆人気からくる音源の強さは言うまでもなく、また(女性グループにしては)ファンダムも大きく強敵だったように思う。現に8月27日の放送でTXTと1位争いをした際に音盤スコアを1963も取っている。ミューバンは点数計算が複雑なので一概には言えないのだが、女性グループの中では高い数値だ。
リリース週が1週前でこれなので、同日だったらおそらくもっと厳しい戦いだっただろう。彼らの作品やステージを作る努力、ファンの熱心なサポートが前提にあるのはもちろんとして、勝負の世界はタイミングや運を味方につける引きの強さを捨て置くことはできない。
今回ミューバンで1位を獲得できたのはいろいろな要因があるが、まずは音盤の売上が想像以上によかったことが挙げられる。「予約枚数93万枚突破」(8月24日報道)これにはさすがに驚いた。
初動も64万1,589枚(出典)と前回から約40万枚も売上を伸ばす結果となった(欲を言えば70万枚に届かせたかったが)。
これまでのアルバム(ミニアルバム含む)の初動推移を見てみると『NOEASY』がいかにドガーーーンと突き上げたかにまず驚くと思うが、彼らにそれだけの魅力があり、努力があり、JYPが活動を続けさせ、そして新規ファンである自分のような者が彼らに出会えるまで支えてくださった先輩ファンのおかげでここまで来ている。
[FIRST WEEK SALES]@Stray_Kids' second full album #NOEASY, has sold 641,589 copies in the first week! NOEASY has almost tripled IN生's sales and is now their highest selling album of their discorgraphy. Well done STAYs and congratulations Stray Kids! 🎉#StrayKids #스트레이키즈 pic.twitter.com/6SxSLxGR5y
— Stray Kids Cloud 9 ⚡ (@StrayKids_C9) 2021年8月29日
さきほどのwowKoreaの記事ではミリオンセラーについても触れている。現時点で100万枚を実質的に売り上げたわけではないが快挙と言って差し支えないだろう。
Stray Kidsが23日にリリースした2ndフルアルバム「NOEASY」は、31日付けのGAONチャートで累積売上110万枚を突破した。特に、JYPエンターテインメントで制作したアルバムの中で“初めてミリオンセラー誕生”という成果を成し遂げた。
これらの数字を見たとき、STAYの心はそれはそれは躍った。正直なところ個人的には前週・同週のカムバグルを見て「もしかしたら地上波以外も厳しいかもしれない」と思っていたくらいだ。それが音盤スコアをベースに戦えることが分かり、国内外挙げて音源やMVのスミンの熱心な呼びかけが始まった。「これは地上波も狙えるかもしれない」誰もが頭をよぎっただろう。
私自身、今回はgenieを引き続き使いつつ、フォロワーさんたちの助けも借りてbugsでの音源購入にまで挑戦してみた。投票に励む気持ちにも一層熱が入った。もちろん自分だけではない。観測できる範囲内だけでも同じかそれ以上に情熱を持ったSTAYたちが大勢奮起していた。神メニューやバクドアの活動ではなかなかスミンや投票に手を出せていなかった方も、今回は少しずつでもやってみようと行動されていたように見えた。
国内外関係なく一丸となったSTAYの熱気は、ひとえに「スキズが大好きで応援したい」という気持ちの強さからくるものだったに違いない。そして、それらの思いと行動が結果を結び、音源スコア0の呪縛から解き放たれることができた。
🥇 210902 [M Countdown] Winner
— KPOP Music Show Analysis (@KshowAnalysis) 2021年9月2日
Here they come and all eyes are on @Stray_Kids with their #Thunderous2ndWin on M Countdown today with the help of #STAY in an intense battle 😍👏
Congrats to #StrayKids ❤️ STAYs 🎉#StrayKids6thWin 🏆 pic.twitter.com/y5ubRe2BRb
韓国の音楽番組には火水木のケーブル放送と、金土日の地上波放送とがある。過去記事でも何度も言及しているが、地上波の音楽番組で1位を取るというのはアイドルグループのひとつの関門であり、特に男性グループにとってはデビュー後何年経ってもなかなか手に入れることができない存在でもある。(この知恵袋のベストアンサーが分かりやすいので参考に貼っておく)
スキズは2018年3月25日にデビューしており、2021年下半期というのはひとつの区切りと言われる7年活動の折返し地点である。また、「3年で結果を出さなければ…」と他の男性グループのメンバーが話しているのも聞いたことがあったため、今回の活動はひとつの大きなターニングポイントになると考えていた。加えて、冒頭に書いたとおりKINGDOMでの優勝。「今回結果を出さなければならない」というのは私個人の思い込みではなかったはずだ。
アイドルは私たち会社員の仕事とはまったく形の異なる仕事で、求められるものも大きく異る。しかし、ボランティアでも遊びでもない。彼らはアイドルとして、プロフェッショナルとして厳しい世界で働いている。そのお給料が十分なものなのか、労働環境が適正かは正直分からない。つらいことも多くあるだろうし、ファンからは見えない苦労もたくさんあるだろう。
それでもどれだけ頑張っても、ファンが増えなければ、見える形で結果を出さなければ、会社からの扱いは悪くなってしまうかもしれない。他のグループのファンの方が書いていた記事に「地上波1位を取ったら扱いがガラッと変わった」とアイドル自身が話していたとあり胸が締め付けられる思いだった。それほどビジネスでは成果を“見える形”で出すことが大切で、逃れられない現実なのだ。
何よりも自作アイドルであるスキズが、3RACHAが、表現者であると同時にクリエイターである自分たちが生み出した作品を認められるというのは、何物にも替えがたいに違いない。彼らと比べるのはおこがましいが、現職(ライター)で依頼されて書いたものではなく、いちから自分で調査をして書いた記事で結果を出せたときの喜びは筆舌に尽くしがたい。そういった経験を彼らにはもっともっとこれからもたくさん味わって欲しい。自分たちが信じてこの世に生み出した作品が認められる。人間が社会的動物である限り、この欲求そして喜びから完全に逃れることはできない。
これは逆に言えば人間だけが許された幸福だ。増して彼らが表現するのは音楽とダンス、ステージパフォーマンスだ。自らの体を使って自ら生み出した作品を表現する、そしてそれらで結果を残せる。その点について、私が本当の意味で理解することや共感することはできない。ただ、想像だけでもそれがとてつもないものだろうというのは分かる。
遅くなったがタイトル曲『소리꾼』(英名:Thunderous)は、これでもかとスキズらしさが詰まった楽曲とパフォーマンスで、彼らが方向性を大きく変えることなくこのスタイルでカムバックしたことを非常に嬉しく思った。
私がダンスも歌も門外漢なのもあるが、スキズのよさはとにかく見て欲しいと言う他ない。口で説明できるような情報量ではない…というのもあるが、楽曲とパフォーマンスから受ける新鮮な驚き、視覚情報としてのおもしろさ、耳に残る癖になるフレーズ…すべてがカチッとはまってひとつの作品になっているからだ。
K-POPファンになりまだ歴が短い私だが、在宅勤務のおともに毎日のように音楽番組を見てきたこの1年半「スキズってあのグループに似てるなぁ」と感じたことは1度もなかった。もちろん多くの魅力的なグループがそれぞれのよさや個性を発揮しているのだが、楽曲とパフォーマンスがこれほどまで差別化できているグループはそう多くないのではないだろうか。
彼らの作品について今語るとしたら、先日公開された「Teen Vogue」の記事を参照するのが一番よい。英語だが翻訳してくださっている人もいるので全文ぜひ目を通してほしい。
ここでは一部取り上げてみることにする。まずはタイトルに込められた意味を見てみる。※翻訳機+少し調整なので変だったらすみません。元の英語を読んでいただければと思います。
最新シングルのMVでは、韓国の伝統的な音楽伝承者であるパンソリ歌手を指す「소리꾼」(ソリクン)を表している。
しかし、「ソリ」は英語で「音」という意味でもあり、「クン」は「実行者」の接尾辞で、何かをよくする人、または非常に上手な人を表す。StrayKidsの最初の啓示は、「騒音を受け入れろ」ということだ。
そして、「建設音楽」という単語で彼らの音楽に触れている。これはバンチャンくんのVLIVEで「スキズの楽曲は工事現場の音みたい」とアンチ(?)のコメントを拾い、「僕たちは自分で音楽を作っている(建設している)からそうかもね」と返したことに起因する。次の部分を読むとそれがよく分かる。しかし、ツイートされている方もいらしたが、まさかあのコメントが「自分たちだけの武器になると思った」と言われることになるとは投稿者は思いもしなかっただろう…。
ファンだけでなく業界の同業者からも広く愛されているリーダー・バンチャンは「実は『ノイズミュージック』という言葉が私たちだけの武器になると思った」とTeen Vogueに話した。8月23日に発売された2枚目のアルバム「NOEASY」のタイトルにインスピレーションを与えた。
アンチの声をもクリエイティブの原動力にする。創造に対する確固たる信念をどれだけ強く持っていても、結果が出るまでそれを貫き通すというのはそう簡単ではない。実際、記事の途中ではこういった記述もある。
チャンビンは「キャリアの初期は、私たちの音楽について少し迷いがあったと思う」と振り返った。「 しかし、(私達の)音楽の色を追求し、発展し続けStrayKidsというジャンルを確立し、今のチームになることができた。」
それでも新しいものに挑戦し、実験を試み、最高の音楽とパフォーマンスを追い求め続けるスキズたち。しかも8人全員が同じ目標を持って突き進んでいる。このチームワークなしには彼らのよさは語れないし、私たちが彼らに魅了されるひとつの大きな要因でもある。
断片的に抜粋してしまったが記事全体を通して読んでみると、自信を増した彼らの魅力がここに来て爆発したのも納得だ。彼らは紛れもなく、自分たちの色を持った音楽とパフォーマンスでここまで上り詰めてきた。そしてこれからも高みを目指して邁進するに違いない。
土曜と日曜の音楽番組は、男性グループが1位を獲得するのはかなり難しい。それでもどうか1位候補にあがり…あわよくば1位を獲得する姿を見届けたい。予測アカウントさんのFINALツイートを見るに候補には入るといいなと思うが、過去予測と実際の候補が一致しない場合もあったのでやはり明日を待つしかない。
🎯 210902 [Music Core] FINAL#RedVelvet (30%) win both Live Voting#BTS (30)% or #StrayKids (30%) or #AKMU (10%)
— KPOP Music Show Analysis (@KshowAnalysis) 2021年9月2日
2 of these can be nominated, hope for a higher Broadcast / V.Committee score than predicted + win Live Voting (if nominated) by a big gap
Good luck to all 🍀 pic.twitter.com/UhikBV89Qk
リアルタイム投票の準備をしながら、ミューバンで1位を取った気持ちを残したこの記事は終わりにしようと思う。
(ちょっと長い余談)
いまだに神メニューで1位を1度も取れなかったことは悔しく思う。当時MV再生回数のスピードはものすごかったし、ファン人口も増えたのに結果に結びつく行動をする人が少なかった(もちろん自分含め)。長年ファンの方はもどかしく思っていたかもしれない。K-POPの世界は、日本の音楽シーンとは似ても似つかない。どのファンダムも必死でスミンをして、投票をして、1位を獲得している。人によっては(目的はさまざまあれど)同じCDを何枚も買う。黙っていても1位を取れそうなグループでさえファンダムの熱気は高い。それは他のグループもゆるくだが追っている自分が見てきた景色でもある。だからこそ今回の結果は心から嬉しく思う。
実はこの記事を書き始めたのは、まだ2週目の活動も始まっていない8月28日の夜だった。ここ1週間、もっと言えばK-POP初心者向けの記事を公開してから不定期に「ブログを見ました」「分からないところがあるので教えてもらえませんか?」とDM等で声を掛けていただくことが本当に増えて、皆さんの「どうにかスキズの力になりたい」という気持ちをひっしひしと感じてきた。
私自身K-POPを知ったのは2020年3月、最初はスミン?投票?韓国の音楽番組どう見るの?と疑問だらけだった。でも偉大な先輩ファンの方々が残してくださったガイドやツイートに随分助けられて、今や応援の仕方について聞かれる立場にまでになった。実際役に立てているかは疑問だが……。
そもそも全然面識のない人にDMやリプで話しかけるってなかなか勇気が要ることだ。なんか怖い人だったらどうしようとか、返事来なかったら悲しいなとか…でも勇気を持って声を掛けてくださって、分からない点を聞いてくれて、試してくれて、そうやってやり取りをして「なんとかできました!」と返してくださるのが本当に嬉しかった。他人の心を、行動を変えるのはとても難しい。でも自分自身で変わろうと立ち上がったてくださった方ほど頼もしいものはない。
元来面倒見のいい性格でもないので、STAYになっていなかったらこんなふうにファンと交流もしていなかったと思う。でも熱心なSTAYが、そして何よりStray Kidsの存在が私の心を変えてくれた。
2021年2月24日、7人のパフォーマンスを見たあの日、もうこんなふうにスキズを応援することはないのかもしれないと思った。そのあともいろいろなことがあった。ファン同士での揉めごともあり、正直すっかり気分が暗くなったこともあった。
でも8人に戻ってこうして1年近くぶりにカムバックして、予約93万枚という記録を出し、初動は60万を超え、ミリオンセラーアーティストと呼ばれ、そして地上波音楽番組でも結果を残したスキズについてきてよかった。応援していてこんなに幸せな気持ちにさせてくれるグループ、推さない理由がない。
[Stray Kids : SKZ-TALKER] Ep.38より
プライドを持って自分たちの歌やパフォーマンスを表現する彼らがプロとしての仕事をこの先も信念を曲げずに続けて欲しい。だから可能な限り結果に結びつくような応援の仕方をしたい。それは私自身の信念だ。他人にその考えを押し付ける気はない。それでも同じ気持ちを持ってくださった方が頼ってくれたときには、全力で手助けさせていただきたいと思う。もちろん自分もより貢献できるようK-POPについてもっと学んでいきたい。
2021/09/06 追記:
スキズは土曜のウマチュンで1位候補を逃し、悔しい思いをした(それでも4位は過去最高順位!)翌日の人気歌謡でまさかの1位候補…さらに1位を獲得した。
人気歌謡で1位、すごいよ…😭😭😭ほんとにすごい。おめでとう🎉びっくりしたぁ…正直インガはかなり厳しいと思ってた……#Thunderous4thWin#StrayKids @Stray_Kids pic.twitter.com/VX9biVRKCe
— aica⚡️ (@aica_skz__) 2021年9月5日
あまりの出来事にTwitterでさんざん叫び散らかしたのだが、ブログにも書き残しておこうと思う。
人気歌謡というのはウマチュン以上に音源重視で、男性アイドルグループがトップ3どころか10位以内に入るのもなかなか難しい番組である。毎週見ていると分かるが、だいたいがロングヒットの女性アイドルグループ、もしくは本国人気の高いトロット歌手などアイドルとは別のジャンルの方がランクインしている。
一方、MV再生数の比重も高いため、スキズからするとウマチュンよりはやや入りやすかった(いや入りやすかったっていうのもすごい違和感あるけど)ようだ。それにしても…正直トップ10に入っただけで飛び跳ねるレベルなのでまだふわふわしている。退勤VLIVEでもみんなまだ実感がわいているようないないような感じだった。
ツイートされている方がいたとおり、第4世代と呼ばれる世代の男性グループが1位を獲得したのはX1以来約2年ぶりということでそりゃあもうお祭り騒ぎである。そして私が見てきた1年半のあいだ、この世代の男性グループが1位になったことないなぁという記憶は正しかったようだ。歴代の1位獲得作品はこちら
ツイートでちょっと間違ってしまったのだが、どうやらここ最近で1位を取った男性グループはBTS、SHINee、SEVENTEEN、NU'EST、NCT DREAMだったようだ。スキズより先輩ばかりだ。音盤100万枚を売るグループ、本国人気が高いグループ…そういった突出したものがないと人気歌謡で1位を取るのは難しい。(ドリムはメンバーの年齢的には近いが、第3世代に含まれるらしい)
『Back Door』期の人気歌謡のトップ3をまとめてみたのだが、この時期は本当に音源モンスターさんたちが並んでおり入る隙間がひとつもない。
自分用メモ✍️
— aica⚡️ (@aica_skz__) 2021年9月5日
Back Door活動期あたりの人気歌謡のトップ3がどんなだったをちょっと振り返ってたんだけど(2020年9〜10月)そうそうこういう世界だよな〜と。トップ10に入るのすら大変なイメージ。 pic.twitter.com/gcvjYaNulT
なんというか、本当によかったなとありきたりな言葉しか出てこないけれど、この1位はとてつもなく大きくて、大切な1位だったように思う。もちろん水木金の1位も大切には違いないが、この難易度の高い人気歌謡で1位を見事取ってしまうのがスキズとSTAYのイレギュラー感というか…レジェンドの第一歩というか、そういう壮大なものを感じてしまった。
今日はテンションが上がって眠れそうにない(もうすぐ午前2時)が、なんとかベッドに横になって目を閉じようと思う。