米が高くても、基本給が上がらなくても、ボーナスが出なくても…削れないのが趣味である「オタク事」。そんな人がわたし以外にも大勢いることだろう。
しかし、娯楽が溢れる現代日本。長くオタクをしていると、目新しいものに出会いづらくなってくる。おそらく実際飛び込んでみると知らないものもあるだろうが、エンタメにたくさん触れてきたが故に「きっとこういう感じだろうな」と予想をつけるようになる。そして、「やっぱりそうだった」「あ、ここはちょっと違ったな」と答え合わせをしている自分に気づく。
それでも稀に出会ってしまう。体験したことのない、エンタメに。わたしには、まだ知らない世界があった。残っていた。この記事は、そんな“感覚”を求めて、今日も現場に足を運ぶひとりのオタクの感想記事だ――…
とまあ壮大に書き出してみたのだが、そう大げさというほどでもない。事実だ。
今日はLDHつながりのフォロワーさんと映画「トワイライト・ウォリアーズ」の吹替版を見て、そのあと作中で出てくるような叉焼飯を食べに行きたいねという約束をしていたのだ。すでに字幕版は2回見ているが、本編でカットされたシーンが最後にボーナス映像として追加されたこともあって、久しぶりに見に行った。吹き替えは、映像に集中できる分、字幕で見たのとはまた違った良さがあった。声優さんたちの中では特に信一(ソンヤッ)と王九(ウォンガウ)がぴったりハマっており、ボーナス映像も意外なシーンだったり、王九が可愛かったりで満足度が高かった。

さて、そんな中、わたしはそのフォロワーさんが最近Xでしきりにヒプノシスマイク(以降、ヒプマイ)の映画についてポストしていたのが気になっており、それについて触れてみた。「今話題のヒプマイの映画は、そんなに面白いのか」と。
実はヒプマイという作品が世に出てまだそんなに経たないころに当時の会社の先輩(オタク)から、「投票のためにCDをたくさん買ったからもらってくれないか」と何度か受け取ったことがあった。ただ、当時別の作品かアイドルかにドハマリしていたのか、良いなと思ったものの沼入りはしなかった。2019年に一度ヒプステのLVを見に行ったが、ヒプマイに触れたのはそれきりだったと思う。
何気なく触れたその話題に、これまで見たことのないほど生き生きと饒舌に語り出してくれたフォロワーさんは「今から見に行きましょう!!」と言うか言わないかのうちに上映館の情報を調べ始めていた。これをオススメしたい!というオタクの情熱は計り知れない。LDHのライブ後ですらあんなに目をキラキラ輝かせながら語った姿は知らない……笑
オタクという生き物は、近しい好みや信頼できる感性を持つ別のオタクの嗅覚を非常に信用している節がある。かく言うわたしも、その方が評価しているものはきっと良いものだろうと思い、これは一度見てみないといけないなと思わされた。その場ですぐに夕方上映開始の回を予約してくださり、「2,500円するんですね」と言ったわたしに「お金じゃねぇ…!!」と熱く返答してくれた姿が眩しかった。
※本記事では、チーム名(例:Buster Bros!!!)ではなく地名(例:イケブクロ)表記で示すことをご了承いただきたい。
映画「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」とは
観客によるリアルタイム投票でストーリーが変わる!日本初インタラクティブ映画がついに誕生!

掲出されていたポスターにはそう書かれていた。ちなみに「インタラクティブ」とは、ITの分野では、情報の送り手と受け手の関係が固定的ではなく、その場で互いにやり取りできる状態を指すときに用いられる。
投票は「CtrlMovie」という専用アプリを利用する。事前にインストールだけしておくとよいだろう。会員登録はしなくても問題ない。映画の中で注意事項が説明され、どうすればよいかの指示が出る。最初にスクリーンに表示されるQRコードを読むことで、投票時には画面が勝手に切り替わる。10秒のあいだに良いと思ったチームに投票する。
そもそも「ヒプノシスマイク」とはどんな作品なのかも少しだけ触れておこう。
各チームの自己紹介的な動画が公式から出ているので↑を見るのが早いかもしれない。
概要:
男性声優による音楽原作キャラクターラッププロジェクト。通称「ヒプマイ」。当初は4チームで12人だったが、2019年9月7日・8日に開催された4th LIVEにてメインキャラクターが18人となり合計6チームとなった。ストーリー:
武力による戦争が根絶され、女性が覇権を握るようになったH歴。男性を完全排除した中王区(ちゅうおうく)と呼ばれる区画で、女性による政治が行われるようになった。そこで定められたH法案により、人を殺傷するすべての武器の製造禁止、及び既存の武器の廃棄が命じられた。
しかし、争いは無くならない。争いは武力ではなく、人の精神に干渉する「ヒプノシスマイク」にとって代わった。このマイクを通したリリックは、人の交感神経・副交感神経等に作用し、様々な状態にする力を持つ。(Wikipediaより)
映画の話に戻ると、このヒプマイ映画、公開日は2025年2月21日。それがなんとGWにも上映中だ。SNSで話題になり、口コミで広がり上映期間が延長され続けている。
投票で勝敗が決まるということは、ストーリーやエンディングが複数種類あるということで、聞いてみると映画館の所在地によって、勝つチームに傾向があると言う。
たとえば、新宿の映画館であればシンジュク、渋谷であればシブヤといった感じだ。では、横浜の映画館であれば勝者はヨコハマは想定通りとして、同じ神奈川のよしみがあるはずの川崎の映画館では実は毎回ヨコハマが勝利するわけではないらしい。川崎から見た横浜はなかなかに複雑な存在であり、実際に自分が川崎市民なので「その心情、わかるなぁ…」となったりもする。なんだか想像以上に“現実世界”とリンクした楽しみ方ができるとわかった。
さらに最近は“シマ荒らし”が現れると言うではないか。前述の通り、新宿であれば100%シンジュクを勝たせるというのが暗黙の了解(?)になっている中、人の少ない平日昼間などを狙い別のチームを勝たせる反勢力が投票に参加する。もちろん「良いと思ったほうに投票すればよい」のだが、そのディビジョンが属するエリアでの抗争のような構図に「ガチでバトルじゃん……!!!」と熱くなってしまった。まさしく新感覚。
わたしはヨコハマ推しで、碧棺 左馬刻(アオヒツギ サマトキ)様がめちゃくちゃ好きなのだが、今回はナゴヤが強いらしい品川で見ることになった。
開幕から浴びる新エンタメ体験!わたしは今「ライブ会場にいる」――!?
ヒプマイを知らない人もすんなりと世界観に入っていけるよう、チームとキャラクターを紹介するためのオープニングムービーで概要はつかめるようになっている。
当方上京して(ただしくは上神奈川して)14年あまり、見慣れた東京や横浜の景色にキャラクターが映し出され、あたかもリアル世界に存在しているのではないかと思わせるような演出に引き込まれた。ヒプマイが架空の世界(場所)のお話ではないところも、リアルタイム投票という試みがファンに刺さったひとつの要因に思える。
この映画、ほとんどがラップをしているか歌っているかなのだが、とにかくそこにこだわりがものすんごく詰まっており、特筆したい点がたくさんある。
まずはなんといってもバトル中の「カメラワーク」だろう。ぐるぐると回ったり、下からのアングルで映したり、キャラクターの視線の先に自分がいるような見せ方をしたり。ライブビューイングを見ているのと近いが、今まさにバトルがおこなわれているライブ会場に、観客として参加しているような臨場感は映画館でないと味わえない。臨場感は没入感となり、当事者としてヒプマイの世界にのめり込んでいく。
関連として、視覚情報の扱い方がうまい点にも触れておきたい。ライブシーンの映像の作り方がオシャレで見応えがありまくりなのだ。登場から各人のスピーカーの具現化、マイクを手にラップでバトルするキャラクターたちの描き方まで、すべてが鮮烈だった。背景に溶け込ませるように載せられたLyricも熱い。もともとデザイン性の高さが評判の作品ではあると思うが、映画の映像を見て一気に虜になってしまった。
次に、何よりもやはり「楽曲」が素晴らしい。これは以前から知っていた部分もあるが、どの楽曲も“ガチ”で制作されている。女性向けジャンルの中でここまで楽曲に本気な作品はそう多くはない…と個人的には思っている。ご存知の通り、楽曲提供は錚々たる顔ぶれが並ぶ。そう詳しくない自分でさえ、HIPHOPジャンルでよく知られ、ラッパーとして活躍する方の名前が次々出てきて驚くばかりだ。たとえば、シブヤの『バラの束』はKICK THE CAN CREW提供だ。アラフォー世代の青春時代に欠かせない存在であろう。
今回わたしは聞くことはできなかったが、ヨコハマの『Choice Is Yours』の作曲は、山嵐とHAN-KUN(湘南乃風)だ。これ絶対劇場で聞きたいので横浜の映画館に行かねば…… こちらでフルも聞けるが、グッと来るものがある。
--- 5/18 追記ここから ---
5/17ついにヨコハマ優勝をT・ジョイ横浜で見届けてきた。第9弾特典開始日ということもあって満席。横浜の映画館でのハマ優勝の熱気はかなり高く、青のペンライトが綺麗だった。2ndステージでこの楽曲が流れたとき、映像と合わせて、胸に迫るものがありうるっときてしまった。取った座席が左右前後からド真ん中だったのもあって没入感もすごかった。興奮冷めやらぬ映画終わりすぐのポストもリンクしておく。
くぅうううう 横浜で味わうハマの勝利最高すぎる……っ!!!2ndステージ曲も演出もビジュも良すぎて涙出た… やっぱり横浜が一番大好き😭もう1回見たいなぁ pic.twitter.com/rnpZZUHCVf
— ai (@aic__a) 2025年5月17日
前回見れなかったシンジュクの2ndステージも見れたのだが、SALUさんが作った楽曲ということでフォロワーさんからもおすすめされており、見れてとても嬉しかった。チルな雰囲気が心に沁みた。映像も美しかったのでもう一度見てみたい。
--- 5/18 追記ここまで ---
今取り上げた楽曲以外も本当に良い曲しかない。見た中で好きだったのはFirst Battleのイケブクロvsナゴヤの『Last Man Standing』だ。良い曲過ぎんか……?シンセの音が好き過ぎる。映像が一部公開されている↓が、早くフルで配信してほしい。
普段ラップを好んで聞かない層でも思わず惹かれる曲ばかりだし、メロディアスな部分も含まれているのでかなり聞きやすい。ペンライトを手にしていたらノリノリで振っていたに違いない。実際リピーターと思しき猛者たちはしっかり推しチームのカラーのペンライトを振り、絶妙なタイミングで掲げ、合いの手を入れ、拍手喝采を送っていた。応援上映と銘打ってはいないが、実質はそのような形になっており、客席の一体感が生まれていたのが印象的だった。
「映画館で見るべき」と思う作品に出会うことはままある。その中でもこれだけライブシーンに全振りしたヒプマイは、確実に「映画館の音響で聞くべきである」と声を大にして言いたくなる作品だった。いつか配信サービスに登場したとて、映画館で味わうのとはまったく別物になるに違いない。
そして、「リアルタイム投票」の仕掛けも忘れてはならない。映画を見ながらスマホアプリで投票し、瞬時に集計され、結果が表示される。これをほぼラグなしリアルタイムでおこなっているというのだから、現代の技術(特に通信技術)には驚かされる。前述の通り、エリアによっては結果が大方わかっているところもあるが、そうでないところもあり勝者発表までのドキドキがたまらない。
公式によると、5回のリアルタイム投票結果によって、変化する展開数はなんと全48パターンもあるらしい。さらにエンディングは7通り用意されている。こんな映画には出会ったことがない。推しチームが勝った様子も負けた様子も両方見たいのがオタク、これが何度も足を運びたくなるポイントのひとつだ。ちなみに「VOTING STATUS」というページでは、各劇場の熱量が可視化され、応援するディビジョンが、どの劇場で熱い支持を集めているのかが明らかになっている。(公式より)
品川は1st BATTLEのヨコハマvsオオサカ、シブヤvsシンジュクは結構接戦だということがわかり「へぇ~!!」となった。なんとなく気になって梅田を覗いてみたら、意外や意外オオサカの圧勝ではなく、FINALは中王区が勝ち取っている。これは関東も同じくだが、同県に複数上映館がある場合、「この館ではこのチームの勝利を見られる」という決めが発生している(みんながエンディングを網羅できるような配慮という意味で)らしく、それもまた面白いと感じる。
ナゴヤびいきの品川、納得のステージに投票即決
前述の通りT・ジョイPRINCE品川はナゴヤが強い。わたしはオオサカとナゴヤ以外はキャラクターの名前もなんとなくの関係性(2019あたり時点の)も知っていた。そのためその2チームについては、今回で初めてしっかりキャラクターを知り、ステージを見たことになる。
ナゴヤの赤髪が特徴的な波羅夷 空却(ハライ クウコウ)のラップを聞いて、「うま…………」と思わず声を漏らした。素人耳にもわかる、心地の良いフロー。高いバイブズ。なんでこんなに引き込まれるんだろう?とずっと魅了されっぱなしだった。ナゴヤの楽曲を映画館で全部聞けたのは良かった。この曲↓はHOME MADE家族提供だ。
ファイナルのナゴヤvs中王区では、「1回ヒプマイ映画味わっとくか」と来たにわかオタクが、テンション最高潮で食い入るように見るまでになっていた。中王区の御三方がとにかくカッコよすぎる。女性のラップであんな良いと思うことって自分の経験上なかなかなかったので(K-POPでちょっとあったくらい?)革命だった。
投票では毎度、ナゴヤが含まれている場合、気づいたら指はナゴヤを押していた。3人はバラバラな特徴を持っているのに、チームとしてラップをすると、途端に互いの声質や歌い方の個性を活かす動きをする。破天荒に見えてかなりメンバー思いの空却のキャラクター性も好きになっちゃったし、最初に見たのを親と思う…ではないが、思い入れの強いチームとなった。
もしわがままを言うなれば…
強いて惜しいなと思った箇所を挙げると、いくつもの分岐がある以上仕方ないのだが、やや展開が単調であると感じられた。もちろんそこまでストーリーに比重が置かれているわけではないため難癖レベルではある。ただ、負けた側が「もうちょっとだったのに」「惜しかった」と毎回言うため、「ほんとに競ってたら共感できるんだけどな~」「完敗のときとで様子が違うと面白いのに」と思った。
さきほど挙げたサイトで勝敗は投票比率まで公表しているので出せないことはないと思うが、大差がついているケースもあるのであの場では見せない判断なのだろう。
また、投票にはスマホを操作しておこなうのだが、ちょっとのことと言っても映画に入り込んで見ているため急にスマホを取り出して押すという行為に一瞬混乱を生じる。投票は10秒間と短いので焦ってあわあわしてしまった。これはもうリピーターになって慣れるしかない。
映画館で上映しているあいだに「ヒプマイ」を体感すべし
5月以降もしばらくは上映が予定されているが、今後はどうなるかわからない。上映開始からだいぶ長くなってきたし、「見に行こうと思ってたのに…!」となりかねないので、少しでも気になっている人は早めに行くようオススメしたい。
こういった形を取っているため上映館の数は多くはない。現にわたしの地元福井では上映されていない。そんな中で興行収入10億円を突破したというニュースは衝撃だったし、以下の記事がとても興味深かった。記事によると通常の3分の1程度の上映館数らしい。
10億円突破の快挙を成し遂げた映画「ヒプノシスマイク」にみる観客参加型映画の可能性(Yahooニュースより)
この記事に目を留めたもうひとつの理由は、スクロールしていくと“ファンが繰り返し足を運ぶライブ映画”として、わたしが最近(今更)ドハマりしているMrs. GREEN APPLEの「The White Lounge in CINEMA」に言及していたからだ。こちらは興行収入19億円。ライブ映画でこれほどの数字を叩き出せるアーティストはほとんどいないのではないだろうか。
同じ映画に何度も足を運ぶ、というのは同じライブに何度も足を運ぶ、と通ずるものがある。当然価格や会場へ行く難易度の違いはあるものの、「毎回少しずつ違う」「何度も会場で体感したくなる」など共通点もありそうだ。これだけモノ・コト・体験が飽和している今の日本で、それだけファンの心を掴んで離さないコンテンツに出会えたことが嬉しい。
加えて、フォロワーさんとも少し話したが、ヒプマイの映画、LDHの女と確実に相性が良い。なんというかBOT(BATTLE OF TOKYO)のもう一つの世界線で、こういうバトルやったら面白そうじゃない!?というif妄想に留まらず、楽曲がLDH好きな人にも刺さりやすいと思ったからだ。ライブが好きな人はなおさら。この新感覚エンターテインメントをぜひ映画館で体感してほしい。
ヨコハマを見にもう一度は映画を見にいきたいと思っているので、ここにまた追記するかもしれない。一旦は初見の新鮮な感想を残して、ここまでにしたい。今日行くことを提案してくださったフォロワーさんに大感謝!(真相の映画の感想もあれこれ語れて楽しかった!)いろんなパターンを見たくて通っちゃうのも納得だなぁ。