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【雑記】SNSでのシェアはどこまで許される?オタ活するなら知っておきたいデジタルコンテンツの著作権

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自分で撮影した写真の著作権は自分に?ラテアートを描いたお店の人?カップのデザイナー?

TwitterTikTokInstagramに…私たちアイドルファンの生活にSNSは欠かせない存在ですよね。公式からの情報をいち早くキャッチするのはもちろん、日々の膨大な供給をさばくために、他のファンの方や情報アカウントの投稿を頼りに最新情報を追いかけている方も多いと思います。
そして情報だけでなく、推したちの可愛かったり面白かったりする動画や画像が本当にたくさんあって毎日大忙しです。笑 さらに見るだけでなく、自分自身が投稿する側になることもあります。私も1日のツイートの大半を添付ありで投稿しています。

ところでほんの数日前、bubble(アイドルと1対1でチャットができる(体感する)サービス)のアップデートでついにスクリーンショット防止機能が実装されました。

AndroidiOSで仕様は異なるもののどちらも「ユーザーにスクショをさせないための機能追加」です。わざわざ開発コストをかけて実装しています。では、なぜこんな機能が実装されたのでしょう?

今日は身近な例を挙げて、少し真面目にデジタルコンテンツの著作権、そして私達ファンと公式の利害関係のバランスについて考えてみたいと思います。
ただし、例によって私はただのライターで、法律の専門家でもプロのマーケターでもなんでもありません。特に法律部分はWebである程度調べたものの知識が不足しているため鵜呑みにせず、皆さんがご自身で考える際の参考にしていただければ幸いです。何か不適切な点がありましたらコメントかTwitter@aica_skz__)でご指摘くださると嬉しいです。

 

 

具体例から考えるコンテンツの権利

事例1:bubbleのスクショ防止機能実装の裏側

なんかものものしい見出しをつけてしまいましたが…笑 真相はもちろん分からないため憶測ですのでそのへんご了承ください。

利用している皆さんはご存じのとおり、bubbleは有料サービスであり、コンテンツのアプリ外への流出を禁止しています。にも関わらず日々トーク画面のスクリーンショットやメンバーが投稿した音声や写真がTwitterに流れてきます。それもひとりふたりではありません。日本人はさほど見かけませんが、有料コンテンツに対する文化が違う海外ファンは何もためらうことなくSNSへ投稿します。(補足:日本人が絶対守ってるというわけではなく、私も自分ではスクショ等を投稿しないものの英訳ツイートを参考にさせていただくことがあり、清廉潔白ではありません。)
今回サービス提供側が動いたということは、「有料コンテンツの流出が開発元、あるいは事務所やアーティスト本人に明確なデメリットとなっている」と言ってもよいでしょう。

冒頭でもお伝えしたとおりスクショ防止機能を実装するには開発コストがかかります。要件定義して、設計して、開発して、テストして…スマホアプリって実機テストがほんと面倒ですよね。機種違い・OSバージョン違いのテストもしないといけません。
iOSはこういった機能を組み込むのがやや大変で、スクショはできるものの警告ポップアップという仕様になっています(端末情報を保存しており、明言されていないもののあまりにも頻度が高いとペナルティがあるのではないかと思っています)。Androidはスクショ自体できないそうです。ここまでする必要があった、つまり流出がダイレクトに何らかの損害になっているとしか思えません。

それでも今日もbubbleのスクショや画像がたくさんTwitterには流れてきました。今度は音声や画像のDLボタンが消えるのか…はたまた一発でアカウントロックされるようになるのか…ある程度利益が出ているためbubbleそのものをサービス停止することはおそらくないと思いますが、またユーザーに不都合な追加機能が実装される可能性も0ではありません。
利益といえば、ちょうどいいタイミングでこんな記事を見つけました。(2021/06/21公開)「ディアユー」はbubbleやLsyn(SMアーティストのbubble)の開発元です。

「ディアユー」がバブルを打ち出して急激に成長し、Kポップファンプラットフォーム市場を揺るがし始めている。1-3月期は32億ウォン(約3億1683円)の営業利益を記録し、初めて四半期黒字を記録した。
5月末から6月初めにはJYPエンターテインメントに対し、株式の23.3%(428万5192株)を214億ウォンで売却し、「SM·JYP同盟」を結成した。 14日には今年下半期の企業公開(IPO)を目標にコスダック市場への上場を推進すると発表し、関心を集めた。

(出典)KPOPアイドル話しかけてくれるサービス人気 - 韓国経済新聞国際版

景気がいいねぇ~!!!上場までこぎつけるとはやりおる。

さて話を戻して。今回、企業利益の保護がユーザー体験の損失より優先された事例とも言えませんか?ユーザー体験はUXと表されることも多く、マーケティング領域ではとても重視されます。昨今の顧客はただ単に質のいいものを求めるのではなく、お金を出してどんな体験が得られるかを大事にしているからです。それを失わせてまで仕様変更をしたんです。結構重い決定だったと思いませんか?

企業はユーザーが(常識の範囲内で)おこなった著作権の侵害を見逃してくれることがあります。それは昨今注目されているSNSでの情報拡散や口コミ効果でさらなるファン獲得が狙えると思っているからです。本来は有料無料に関わらず、画像や動画を一部切り取ってクレジットや出典も明記せずSNSに載せた場合、権利元から注意を受けたり厳しいと訴えられたりする可能性だってあります。
しかし、コンサルを入れて高額のプロモーションをするよりもユーザーの拡散力をうまく利用したほうがずっと効果がある場合もあるため目をつむってくれています※。ユーザーは楽しくSNSでシェアできるし、企業はお金を使わず勝手に宣伝してもらえるし。要はWin-Winの関係ってやつです。その均衡が崩れると、今回のようにユーザーの行動を制限してまで利益を守る行動に出ます。
※もちろんディズニーや任天堂のようにめちゃくちゃ著作権に厳しい企業もあるため一概には言えません。

(参考)マーケターもUXを優先すべき理由 | UX MILK

 

事例2:日本のテレビ番組だけが権利に厳しい?

この記事を書き始めたのがかなり前なので、古い話題ですみませんがお付き合いください。
今年の2月、NHKの「ヒャダ×体育のワンルーム☆ミュージック」という番組にStray Kids(以下、スキズ)が出演し、パフォーマンスを披露するだけの通常の音楽番組とは異なり、彼らの楽曲制作にフォーカスを当てた特集がファンのあいだで非常に話題になりました。

公式Twitterには上記のような番組のワンシーンのスクリーンショットが何枚か投稿されましたよね。
放送後、Twitterにはファンが切り取った番組の動画がいくつかシェアされ、私のTLにも流れてきました。そのとき同時に「日本の番組、特にNHK著作権が厳しいから公式が投下したもの以外を載せるのはやめよう(マナーが悪いファンだと認識されると今後呼ばれなくなる)」という呼びかけも目にしました。海外STAYさんたちもある程度ここは理解を示してくださったようでした。

さきほども少し触れましたが、私がK-POPアイドルのファンになってからもっとも驚いたことのひとつが、テレビ番組や有料のコンテンツでも(おもに海外ファンによって)当然のようにTLでシェアされるということです。これは日本のグループを追っていたときは、自分の観測範囲内ではほとんどないことでした。少なくとも個人のファンアカウントでは見かけませんでした。インスタやTikTokではいるもののアカウントごとBANされている人も何度も見かけたのでリスクがあります。
では、日本以外では問題ないのでしょうか?私含め韓国のテレビ番組などの動画やスクショをアップしたことがある方もいると思いますが、ガンガンアップしてもいいと思いますか?
実は韓国も局によって厳しいところがあります。以前ヒョンジンくんとリノくんが出演したお料理番組、放送局はMBCなのですがYouTubeに(海外からも確か見れる状態で)公開された動画をURLは載せたものの一部切り取ってツイートに載せたところアカウントロックされたことがありました。MBCは比較的厳しいことで有名だそうです。

国や媒体に関係なく、コンテンツの権利は制作元(テレビ番組については、テレビ局なのかとか細かいところは門外漢なのでちょと分からなくて曖昧な書き方ですみません…)にあります。日本もNHKだけに特別な権利があるわけでも適用される法律が違うわけでもなく、他の局がたまたまお目溢しをしてくれている※だけであって、地上波の番組や無料で公開された動画だとしてもその点は変わりません。
※こちらも番組まるまる1本YouTubeに上げる、出演者の名誉毀損にあたるような内容に編集するなど明らかに有害と判断されるものは罰せられる可能性が高いです。

 

事例3:お祝い広告でも正規に許可を取るのは難しい

K-POPファンの文化にセンイル(お誕生日)お祝いの広告を出すというのがありますよね。インスタやYouTube広告はここを読んでくださってる皆さんもやったことある方もいらっしゃるかもしれません。あとはFanPlusやWhosfan、Thekkingなど投票をして上位になったら駅や街角のサイネージに広告を出してもらえるというアプリもあります。

このサイネージ、個人(もしくはファン複数人共同での団体)でやるのはどのくらい大変でしょうか?直近実はふたつほど寄付という形で参加させていただく機会がありました。ひとつはスキズの3周年お祝いのビジョン広告(6都市)、もうひとつはSHINeeの日本デビュー10周年お祝いの駅広告です。
やはり個人が契約するのは難しく、団体名義かつあいだに代理店が入ってくれることが多いそうです。需要が高いのでそういった専門(?)の代理店も存在するんですかね。

このあたり私は主催をしたことはないので、こちらの記事が分かりやすく書いてくださっていましたので参考にしてみてください。

birthdayadjp.shop

上記の記事から抜粋させていただくと。

放映する広告媒体が決まったら、 なるべく事前に広告対象者の所属事務所から広告出稿に関する許諾申請を行って下さい!

媒体によっては媒体側へ所属事務所から許諾を得たことを証明できる文書(メールのスクショ等)をご提出頂く必要がございます。

広告に関しては、やはり日本は特別規定が厳しいですね。SHINeeは駅構内の広告(静止画像)でしたが、詳細の場所を事前に主催から告知するのは禁止されているとのことで、初日に現地で見つけた方のツイートを頼りに見に行きました。韓国で出すほうがおそらく楽だと思います。
そもそも日本の事務所やレーベルから素材となる写真等の使用許可を得るのは相当難易度が高いです。スキズのファンベースさんのこのツイートが記憶にあります。画像を参照していただければと思いますが、ひと言で言うと、広告を作成するための素材の使用許可が下りなかったということです。

さらに自作ではなく推しグループの音楽を利用するとなるとさらに許可を得る必要があります。日本のレーベルが管理している音源ならJASRAC、韓国のレーベルならKOMCAに利用許可を得て、使用する際は使用料を払う必要があります。

難しいのはK-POPの文化が、この広告の件だけでなくいわゆる“グレーゾーン”という曖昧なものの上に成り立っている部分が多いことです。私もその“グレーゾーン”の写真や動画を楽しんでいるひとりであり、そのおかげでK-POPの魅力を知ることができました。すべてを規制して取り締まっていたら…もしかしたらここまで世界的に人気を博することはなかったのかもしれません。

ただ、善意のつもりで参加した広告、本当に適切に許可が取れていたのか……?私はコンテンツを提供する仕事をしていながら違法なことに加担してしまったのではないか?自分自身に問いかけています。もし正式な手順を踏まれていない企画であったなら(今回参加したものがそうという意味ではないです)考えの浅かった自分に喝を入れなければいけません。
今後は、事務所ひいてはアイドルやアーティスト自身の権利や利益を守るため、もう一度しっかり考えていきたいと思います。

 

デジタルコンテンツに適用される法律

これまで「権利」などとざっくりした書き方をしてきましたが、もう少し具体的な中身まで学んでみましょう。まずはざっと身近な法律を調べてみました。分かりやすいように一部要約等して掲載しますが、詳細は出典元をご参照いただくかご自分でも調べていただくようお願いします。また、特別に表記がない場合、主に日本における考え方となります。なお、ここに挙げた以外にも適用される法律や権利もあります。

著作権

知ってるようでちょっと曖昧な「著作権」。子ども向けの分かりやすいサイトがあったので、少し引用させていただきます。

小説、音楽、美術、アニメなどの作品は、それを作った人がそれぞれ自分の考えや気持ちを作品として表現したものです。そして、この表現されたものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」、法律によって著作者に与えられる権利を「著作権」と言います。

著作権に関係するルールは「著作権法」という法律で定められています。

著作権法は、著作権の内容を、大きく次の二つに分けて定めています。
その一つは、著作物を通して表現されている著作者の人格をまもるための「著作者人格権」、そしてもう一つは、著作権者が著作物の利用を許可してその使用料を受け取ることができる権利としての「著作権(財産権)」です。

①著作権とはどんな権利?|学ぼう著作権|KIDS CRIC

著作権は「商標権」や「特許権」のように申請が必要な権利と異なり、コンテンツが生み出された瞬間に自動的に付与されます。
アイドルファンである私たちの状況に置き換えてもう少し噛み砕いてみると、「著作物」は画像(写真、スクリーンショット)、動画(テレビ番組、MV、DVDなど)、音楽、小説あたりでしょうか。「著作者」は、アイドルが所属する事務所だったりレコード会社だったり、テレビ番組の放送局だったりコンテンツにより異なります。(アイドル自身には「肖像権」があります。それについてはのちほど。)

通常、私達が目にするデジタルコンテンツ(分かりやすいように公式から提供される文章、画像や動画としましょう)は前述のとおり必ず著作権を有しています。たとえば、スキズ日本FCのギャラリーにアップされる写真はJYP(あるいはJYP JAPAN)が著作権を持っているはずです。そしてその写真にメンバーが写っていれば肖像権もあります。また、著作権というと画像や動画だけの印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、文章も立派な著作物(著作権のあるコンテンツのこと)です。
そしてFCのコンテンツのように明確に流出が禁止されているものでなくとも誰もが見れるYouTube公式チャンネルにアップされた動画や音楽、公式のツイートに含まれる写真や動画ももちろん著作物です。

しかし、悪質な場合を除き、これらをSNSに載せても直接個人が罰せられることはほぼありません。それでも罰せられていないだけで場合によっては権利を侵害している状態です。デジタルコンテンツ(≒Webコンテンツ)はタップひとつ、ふたつで著作権の侵害が容易にできてしまうんですね。
実はTwitterにもきちんと著作権に関するポリシーページがありますが、読んだことある方どれくらいいらっしゃるでしょうか?……はい、私もこの記事を作成するにあたって初めて真面目に読みました。。

help.twitter.com

「えーん😭難しいよぅ😭」という気持ちはよく分かります。それに時代とともに変わっていく部分ももちろんあります。でも「楽しい!」「友達と共有したい!」だけでなくクリエイターやアーティストの権利を守ることもしっかり頭に置いておきたいですね。

 

補足1:著作権は財産権の一種である

このへんはもう説明するのが難しいので参考ページを載せるに留めますが…著作権の理解を複雑にしている理由として、著作権は財産権の一種であり、譲渡することが可能であると定められているというのがあります。著作権は、「支分権」と呼ばれる具体的な権利の集合になる……と言われてもよく分からないので、要は

電子出版においては、自動公衆送信を許諾されることによって出版が可能になる。紙の出版物は複製権を許諾されることにより印刷・出版できる。戯曲は上演権、音楽は演奏権、映画は上映権が対応することになる。

(出典)JEPA|日本電子出版協会 支分権とは?

著作権」とひと口に言うけど、実際は対象物によっていろいろな権利があるんだよ~という感じでしょうか。(ざっくりしすぎ)

補足2:DMCAデジタルミレニアム著作権法)を知っておこう

さきほどMBCの動画を貼ったらアカウントロックされたと書きましたが、その際に引っかかったのがDMCAです。コンテンツ制作・提供する側の会社に勤めている方はよくご存じかと思いますが、アメリカの連邦法のひとつで、Webコンテンツに関する著作権の事実上の基準となるものです。
ググってみるとどちらかというと権利侵害されたときの削除手続きの記事が多いですね。それだけWebコンテンツの権利を侵される方が多いのかもしれません。

(参考)「DMCA」を知って著作権を守ろう | デジmag.デジタルミレニアム著作権法 - Wikipedia

補足3:海外が絡むと著作権はどうなる?

この記事を書くにあたり調べてみたのですが、「著作権に国境はない」ということで日本人の私が何かを作って生まれた著作物は、海外でも同様に著作権を持ちます。記事によって若干書かれている内容が違うので気になる方はいろいろな記事や本を見比べるとよいかと思います。

(参考)著作権は海外でも有効? | 知財辞苑外国の著作物の保護は? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC

 

肖像権とパブリシティ権

さきほどもちらりと出てきた「肖像権」。 ここでは合わせて「パブリシティ権」も扱っていきましょう。概要についてはWikpedia先生から説明を引用させていただくに限ります。

肖像権は他人から無断で写真や映像を撮られたり無断で公表されたり利用されたりしないように主張できる考えであり、人格権の一部としての権利の側面と、肖像を提供することで対価を得る財産権の側面をもつ。
また、肖像を商業的に使用する権利をとくにパブリシティ権と呼ぶ。一般人か有名人かを問わず、人は誰でも断り無く他人から写真を撮られたり、過去の写真を勝手に他人の目に晒されるなどという精神的苦痛を受けることなく平穏な日々を送ることができるという考え方は、プライバシー権と同様に保護されるべき人格的利益と考えられている。

著名人や有名人は肖像そのものに商業的価値があり財産的価値を持っている。

(出典)肖像権 - Wikipedia

これ…K-POPファンとしてはアイドルに遭遇して写真を勝手に撮るなどの行為がうっすら頭に浮かぶかもしれません。また厳しい言い方ですが、そういった行為は法律だけに基づいて考えると肖像権やパブリシティ権を侵害していると言えます。
ただし、 アイドルは私たち一般人とはやはり少し違う世界に生きています。悪意がなければ、ファンであれば、常識の範囲内であれば…咎められることはあまりないかもしれません。それでもこういった権利があることは知っておきたいですね。

(参考)デジタルコンテンツと肖像権・パブリシティ権(1)ネットのコンテンツ・サービスで避けて通れない | 日経クロステック(xTECH)

 

寄り道:「引用の範囲内」とはどこまでを指すのか

ここまでデジタルコンテンツの権利についてざっとではありますが学んできました。さて、さきほど私はWikipediaから一部文章を引用しましたよね。結構な文章量を引用しました。また、最近だと記事全文を何枚かに分けてスクショして「こんなのあったよ~!」とツイートする機会も多いと思います。
自分で書いたり作ったりしたものはほとんどの場合自由に扱えますが、気になるのは、公式*1が公開したものを私たちはどのような形でなら引用もしくは利用することが可能か?ということですよね。
おそらく「公式が公開したものを“無断かつ有料で”第三者に提供する」(いわゆる海賊版販売や違法アップロードなど)のは10人いて10人全員がNGと答えると思います。
では、以下のような場合はどうでしょうか。

1. 公式が公開したアイドルの写真を何も手を加えずそのままTwitterに載せてツイートした。
2. 公式Twitterの投稿がオリジナルだと明記して、公式が公開したアイドルの写真を何も手を加えずそのままTwitterに載せてツイートした。
3. 公式Twitterの投稿をRTし、公式が公開したアイドルの写真を何も手を加えずそのままTwitterに載せてツイートした。
4. 公式が公開したアイドルの写真を自分なりに加工して、公式ロゴを切ってTwitterに載せてツイートした。
5. 公式が公開したアイドルの写真を自分なりに加工して、公式ロゴを残してTwitterに載せてツイートした。
6. 公式が公開したアイドルの写真を使ってアクリルスタンドを作って友達にプレゼントした。
7. 公式が公開したアイドルの写真を使ってアクリルスタンドを作ってメルカリで販売した。

パッと浮かんだだけでもこのくらいのバリエーションがありました。焦点はこれが「引用の範囲内」に収まるかどうかです。

どうでしょう…全部問題なさそうですか?

実はこれは権利元がどう考えるかによって答えが異なります(そんな答えあり?)
出典明記がないため、1.でもNGの可能性はあります。4.はNG寄りですが、5.は権利元によって異なるかなぁとも思います。あとはどういう写真かにもよりますよね。「みんなでデコっちゃおうキャンペーン」(ネーミングがダサい)でツイートされた画像だったら大丈夫でしょうし。
あと立体物(アクスタやフィギュア)の作成は日本だとかなり厳しく、ほぼ禁止されていると言ってもいいと思いますが、K-POPでは自作グッズは文化として根付いており公式から明確に禁止されてはいないようです。ただし、7.は少数なら見逃されるとは言えかなり黒寄りですね。大量に販売したら罰せられる可能性が高いと思います。
また、公式のロゴなどをそのまま利用するのも(特に日本では)やめておいたほうがいいでしょう。たまに無料配布(ソンムル)のラッピングなどにグループ名やツアーのロゴをそのまま印刷している方がいらっしゃいますが、著作権の侵害にあたります。が、公式が個人のそういった金銭の発生しない行為までいちいち監視して訴訟を起こすことは考えにくいので、あくまで個人の良識に委ねられているのが実情です。

そうなんです。時と場合、権利元のポリシーなどによって判断が変わるのが難しいところです。それは著作権親告罪(被害者からの告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪を指す)だからです。ただし、昨今は一部非親告罪化されておりすべてがこのとおりではありません。法律も変わっていくので把握しようと思うとなかなか大変です。

(参考)日本の著作権法における非親告罪化 - WikipediaSNS時代のアーティストの応援の仕方【法律勉強編】 - 彼方の音楽

 

企業とファンとSNSのラブ♡トライアングル

ふざけているわけではなく、真剣なテーマです。少し序盤に書いたものと被る点もありますがご容赦ください。

私たちはなぜSNSで「シェアしたい!」のか

共有心理と承認欲求に尽きます!!!(怒られろ)
もちろん情報提供することでみんなが幸せになればいいなという天使もおられることでしょう。ただ、たとえばTwitterならRTやいいね、フォロワーの数なんかが増えると嬉しいじゃないですか。あまり出回っていないレアな情報、有料コンテンツ、プレミアムな会員限定コンテンツ……そういったものを共有するとあっという間にそれらが増えます。誰でも手に入れられるコンテンツではそのような体験は味わえません。

人間がこの欲求を持っていることは恥ずべきことではありません。これがないとSNSマーケティングは効果がなくなってしまうので、むしろどんどんシェアしてください!(企業側の都合が見え隠れしている)

 

企業はファンの「シェアしたい!」心理を利用している

今は非公開にしているのですが、先日CLIOのSNSマーケティングの記事で、企業は昨今の広報活動においてSNSでの拡散をとても重視していることを力説しました。これは業界・業種限らず、ほとんどすべてのBtoC企業が認識していて、どうやったらユーザーに共有されて、ファンになってもらって、ゆくゆくは利益を生んでくれる顧客になってくれるかを必死に考えています。関連書籍も本当にたくさん発売されていて、手法やアプローチ方法も更新されています。(これはちょうど読んでいる本)

私も仕事で記事を書いたときは「SNSでシェアされてバズりたい!」と思います。これは広報・企画がいつも願っていることです。どれだけ質の高いコンテンツを生み出しても今やSNSで話題にならなければ大量流入が見込めないと言い切ってもいいくらいです。いかにファンのシェアして同志と気持ちを共有したい、広めたい気持ちをくすぐって利用できるかを私たちは常に考えているのです……あ、そんな冷たい目で見ないで…!
気を取り直して。こういう使われ方をするのはTwitterが多いですかね。インスタも注目されていますがちょっと難しかったりして手を出しづらくはあります。

要はファンに広報活動をしてもらっているので、繰り返しにはなりますが、

・どこからがNGかは正直企業やコンテンツの権利元による
・自社に利益があると思える範囲であれば黙認している部分もある

ということです。バズりがユーザー獲得、ひいては利益になることを企業も知っているので一律に取り締まることはしていない※んですね。なので出典となる情報、たとえば、元ツイートや元動画のURLを明記しておけば、そして常識の範囲内であれば、一概にすべてをNGとしなくてもいいと個人的には思っています。
※これを見て「わーい!じゃあ著作権は侵害するけど、宣伝活動だからいいよね!」と思われたら悲しいので、あくまで法律違反だけどかろうじて黙認されている状態と思ってくださいね。

 

とはいえSNS側にもルールやポリシーがある

さきほどTwitter著作権ポリシーのページを見ましたが、各SNSで取り決めがあります。法律に遵守しているかが基準になっているものがほとんどかと思いますが、独自に定めているものもあるでしょう。
極端な例ですが、ちょっとエッチなアニメを切り取ってユーザーがTwitterで「18禁です」と記載して全体公開でツイートしたとしましょう。あまり売れていないレーベルのアニメであれば制作元は「これを機に知ってもらえればな」と思って黙認します。権利元とユーザーがWin-Winになりました。……しかし、Twitterには未成年もいますし、そういったコンテンツが苦手な方もいます。いくら18禁と明記していても見てしまう可能性が大いにあります。
Twitterはこういったコンテンツを「センシティブなメディア」としてポリシーを定めて私たちに提示しています。

help.twitter.com

一律違反ではありませんが、いくら権利元とユーザーがよしとしてもプラットフォームであるTwitterなどSNSのポリシーに違反してしまえばやはり罰せられることもあります。

 

具体的な判断基準を提示している例

LDHEXILE所属事務所)

LDHは、アーティストの写真等の利用範囲を明確に定めています。

www.ldh.co.jp

LDHはCDジャケ写やポスター等をアイコンにしてもよく、グッズ製作も認めています。MVのスクショ掲載もNGかと思いきや詳細を見てみるとURLリンク(つまり出典の明記)があれば可です。日本の事務所の中では比較的緩やかなのではないでしょうか。
リンク先に詳細を分かりやすく説明してありますので、興味がある方はぜひ見てみてください。

 

星野源さん

今度はご自身が言及された例です。

mdpr.jp

特にこの点に注目してみましょう。(上記記事から引用)

「そもそもダメなんだよね。みんながやってるからダメじゃないみたいになってるけど、テレビの画面を撮ってアイコンにしたり(SNSに)アップしたり、本当はダメなことなんだよね、法律的にも。
雑誌を撮ってあげるとかさ、僕らが出したTwitterの画像をあげるとか。宣伝になるからいいって思うんだけど、宣伝になる範囲とならない範囲がある」

さて、ここまで私の記事を読んでくださった方ならピンと来たかと思います。公式(この場合は星野源さん個人ですが)が重視する部分はやはりここです。

「法律的にはNGだが、宣伝等自社にメリットがある(デメリットが大きくない)場合黙認することがある」

この手の事象って0か1じゃないんですよね。白~グレーゾーン~真っ黒のグラデーションになっているというか。簡単に言うと、スクショ~動画の切り貼り~動画ファイルの無断配布~海賊版販売ではなんとなく罰せられるレベルが違うのは感覚でも分かるでしょう。
あとは言うまでもなく有料コンテンツ(≒FC限定など範囲が限定されたコンテンツ)かどうか、悪意があるかどうかも判断基準のひとつになると思います。

 

終わりに: 人の気持ちを思いやる

ここまで権利やルール、利益、メリット・デメリットといった単語を多く出してお話してきました。もちろんそういったことはデジタルコンテンツを作る側にとってはとても大切で、皆さんに知ってほしいことです。
以前こちらの記事でも強くお伝えしましたが、有料コンテンツを流出させることは既にお金を出しているユーザーの体験の質が下がるだけでなく、これからお金を出してくれる可能性があるユーザーに「Twitterで無料で見れるからいっか」と思わせる…つまり結果的に私たちが大好きなアイドルに行き渡るお金を減らしていることにつながります。
また、公式の動画やツイートはRTやインプレッションを次のコンテンツ作成への指標にしています。可能な範囲で構わないので切り取ったものではなく、公式を大切にしてあげてください。

そして星野源さんのようにご本人が嫌がる例ももちろんあります。芸能人といってもひとりの人間で、私たちと同じようにひとりひとり違った感覚や考え方があります。 年齢性別問わず、SNSの利用には相手を思いやる気持ちを忘れてはいけません。

ただ、この記事を通して他の方の言動を強制したい・規制したい・罰したいという意図は微塵もありません。私自身まったく完璧でもなければ、清廉潔白な人間でもないからです。これからもっと楽しく、快適にアイドルやアーティストを推していくために皆さんと一緒に学んでいきたいと思います。

ここまで長々とした記事をお読みくださり、ありがとうございました。何かあればトップに載せたTwitterへお気軽にお声掛けください。

*1:ここではアイドル事務所やテレビ局などコンテンツを提供する企業をまとめて公式と呼ぶことにします。