The same Rainbow

LOVE DREAM HAPPINESS を追いかけて

【雑記】“ファンが増えてほしくない!”に警鐘を鳴らす理由~企業活動の視点から~

Stray Kids(以下、スキズ)が先日の「CDTVライブライブ!」に続いて、『ALL IN』発売週には念願の「MUSIC STATION」(以下、Mステ)および深夜帯ながら『Back Door』を披露することでTLが盛り上がっていた「バズリズム02」への出演も決まりいよいよリリースだなぁとワクワクしています。Mステへの出演は雑誌のインタビューでチャンビンくんがいつか出たいと言っていたこともあり本当に嬉しいですね!
そんな中、特にアイドルの界隈ではつきものではありますが、

新規のファンが増えてほしくない

という意見もチラホラ見られたので、今回はそれに対してちょっと思うところがあるというのを感情論ではなく企業活動の視点から書いてみたいなと思います。ちなみに私のフォロワーさんにそういった方はいらっしゃらなかったのでパブサ*1した結果です。
※厳密には「顔ファンが増えてほしくない」「あるメンバーは好きだけど、あるメンバーは嫌いor興味ないファンが増えてほしくない」という意図の方が多いようですが、単純化するためこの記事では「新規ファンが増えてほしくない」と記述します。

 

 

前置き

私は何者か?

ただのいちアイドルファンですが、前職でエンジニアをやっていて、今はIT系のしがないライターをやっています。現職では文章を書くのはもちろん、コンテンツ制作の仕事にも少し関わっており、Webのみですが広報の知識もすこーしだけある…かも…?という立場です。
ただし、エンタメ業界に関わったことがない、かつK-POPファンになってからまだ半年ほどの新米なので、あくまで「企業としては一般的にはこう考えるかなぁ」という個人的な意見であることをご了承いただければと思います。もしこの手のテーマをエンタメに詳しい方が書いている記事を知ってる方はぜひ教えてください!(Twitterはこちら→@aica_skz__
なお、この記事を書くにあたって、10年弱エンタメ業界で編集の仕事をしていた妹にも少し話を聞いて参考にしている部分があります。

 

前提条件

今回はK-POPのアイドルが日本で活動することにフォーカスして話します。そのため本国での活動には当てはまらない部分もあると思います。
そう、大事なのは“韓国を活動の拠点としているグループが海外で活動する意味”なんですね。ここテストに出ます。
そして「日本での活動はしてほしいけど、ファンは増えてほしくないかも…」という方に向けて少し視点を変えてみてほしいなという目的で書いています。「いや日本での活動なんてせんでええねん」という方には響かないと思うので、すみません。。
ただ、いつもそうですが人の考え方は千差万別で正解はないと思いますので、私の考えが正義なのだ!と言うつもりは一切ありません。こういう考え方もあるんや~と捉えていただければ幸いです。ちなみに今回は、韓国と日本の政治的な関係性や思想はほぼ排除して考えています。

 

事務所はなぜアイドルをメディア露出させるのか

わざわざ日本でプロモーションをする理由

TV出演・Webメディア掲載・紙雑誌掲載・SNS更新・VLIVE配信…ぱっと思い浮かぶだけでもアイドルは日々本当にいろいろなコンテンツをファンに提供してくれていますよね!スキズなんて特に本国活動、日本活動が交互にあって休む暇がない…それなのにSNSもVLIVEもマメにやってくれて…!
その中でも事務所(と今回はCDリリースのプロモーションなのでレコード会社であるSony Music)が主体となってやっているだろうなというのはTV・雑誌・広告・企業コラボあたりのコンテンツでしょうか。まず、なんと言っても

プロモーションには莫大な費用がかかる

出演料や掲載料をもらう側でもあるかもしれませんが、多分微々たるもので。音楽番組だって出演料よりステージセットや照明、中継のためのスタッフ確保やインフラの整備のほうが絶対お金がかかってるはずです。
なにより広告を出すのはとにかくお金がかかります*2。今回特に大規模なのはルミネエスト新宿ジャックですね。レコード会社も絡んでるのとルミネ側にもメリットがある(ルミネカード作って買い物してもらうキャンペーンの実施など)ので、どういう費用配分かは分かりませんが、JYP側が一切お金を出していないことはありえないと思ってよいでしょう。
見に行った方はご存知かと思いますが、1日約150万人の利用者数を誇る世界最大のターミナル駅であるJR新宿駅にこれだけ物理広告とサイネージを出すのにいったいどれほどの費用がかかっているのか、考えただけで倒れそうです。“ジャック”の名の通り至るところにスキズ(の広告)がいます。ここまで大規模にやっているアーティストって他にいましたか…?私の無知もあって思い浮かばないのですが……

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(出典)10月21日に現地で撮影

広告費用って馴染みがないとイメージしづらいのでちょっと調べてみたところ、首都圏の駅では下図のようなサイネージ広告で7日間約350万円とのこと。

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(出典)交通広告ナビ「駅広告(駅貼りポスター)+JR東日本

ルミネの件でいうと、新宿駅の地下のところがこんな感じでしたかね。これだけで350万ですよ!しかも7日間。今回スキズは約1カ月の広告掲示です。すると条件で前後するとはいえ、屋外のアルタと向かい合ってるあの巨大広告(少し上の写真参照)は一体おいくら万円なのか…恐ろしい……
追記:フォロワーさんに新宿駅に広告を出す仕事をされたことがあるという方がいらっしゃって、そのときは大体似たようなサイズで3週間700万円ほどだったそうです。ただ、新宿駅南口側だったとのことで、今回のスキズの巨大広告は“一等地”かつ1カ月程度なので1,000万~1,500万くらいかなと教えてくださいました。実際の金額を私たちが知ることはできませんが、コロナの影響で広告費が下がっているもののなかなかの金額になりそうですね。(そして実はコロナでもさほど下がってないかも?と情報を寄せてくださった方もいました…!)
ところで広告全部に当てはまりますが、上記は掲出する料金ですよね。デザインして、作成して(このサイズだと専門業者へ発注かと)、設置工事してもらって、もしかしたら途中1回くらい清掃もあるかもしれない、そして取外し工事してもらって、外した広告は処分するかどこかに保管するか…すべてにお金がかかります。

ちなみに今回スキズが新宿駅とルミネエストに何箇所くらい広告を出してるかチェックしてみましたか?Japan Fanbaseさんがツイートにまとめてくださってたので貼らせていただきますね。

私は初見で「多くない……!?」と言いました。こんなに何箇所も!?ルミネとのコラボなので館内の広告費用がどうなってるかの想像は難しいですが、とにかく並々ならぬ気合いです。TOP発売のときはこういったものはなかったと記憶しています。

あと、以下の記事はちょっと古いんですが、いろんなメディアへの広告掲載費が載ってて面白いので参考にご紹介します。

意外と知らない広告費用。媒体別広告費用17選 | 企業出版ダントツNo.1の幻冬舎メディアコンサルティング

で、「わぁ!やっぱりJYPってお金持ち!さすが!」じゃないんですわ!!!!!

これだけ費用をかけてプロモーションをする=回収する見込みがある、期待しているということです。さきほどは分かりやすくルミネの広告の件を取り上げましたが、他にもたくさんキャンペーンをやってますよね。あれももちろん「ファンに楽しんでもらいたい!」という気持ちはあると思いますが、“なんらかの狙い”があります。つまり投資した費用以上に利益(売上アップはもちろん、知名度アップやFC会員増など)が出ないと意味がありません。
企業、とりわけ株式上場をしている企業は毎年右肩上がりに利益を出し成長していかなければならないんです。株主に詰められます。厳しい世界です。
そしてプロモーション活動には必ず数値目標があります。必ずです。漠然と費用をかける企業はありません。施策の実施後に「終わった~よかったね~」で終わる企業もありません。目標と実績を照らし合わせて何%達成したかを振り返ります。
それにも関わらず、莫大な費用をかけてプロモーションした結果「あれ…思ったよりスキズの日本向けCD売上伸びなかったな…」「あれ…思ったより日本FCの加入者数増えなかったな…」となったらどうなると思いますか?
社会情勢の変化でオンラインでの活動が当たり前になった今、いくら隣国で時差もないとはいえ、わざわざ利益の出にくい国で今後も同じだけのプロモーション活動、CD販売、日本語でのアピールが続くと思っていたらそれは甘い、と個人的には思います。
今、すでにインドネシアやフィリピンのK-POP熱がものすごく高く、人口比率的にも若者が多いので(もし仮に日本より客単価が低いorお金を出す割合が低いとしても)ファンが爆増したら「よっしゃ今後は東南アジアにフォーカスや!」となりますよね。
日本での活動を続けてほしいなら日本の市場は稼げる(言い方)と思ってもらわないといけないんです。最悪日本市場から撤退もありえます。これが脅しではないのは、JYPの他のグループも追いかけてる方はよくご存知かと思います。

アイドルにフォーカスしてると忘れがちかもしれませんが、芸能事務所も慈善事業ではありません。JYPは株式会社であり上場企業です。アイドルたちの音楽番組のステージセットがきらびやかであるために、衣装がしっかりした布と装飾であるために、CDを定期的にリリースするために、確実に稼いで利益を出す必要があります。そのためにプロモーション活動をするのです。
それを達成するためには、そう、ファンを増やすのが一番手っ取り早い。コンテンツに課金してくれる人、CDやDVDを購入してくれる人、ライブのチケットを買ってくれる人を増やせば増やすほど利益が出ます。(厳密にはCDの生産量を増やしたり、より大きなライブ会場を押さえたりと出費も増えますが……)
私がTwitterでたまに有料コンテンツをすぐSNSで共有する人にぼやいてるのは単に「自分はお金を払っているのに!」ということではなく、「結果的にお金を払う人が減ってしまうことを危惧している」ということをこの記事から分かっていただけると嬉しいなと思います。有料コンテンツがSNSですぐ流れてくるとユーザーの購買意欲、絶対下がると思うんですよね…。「どうせTwitterで見れるしFC更新しなくていいや」って思った人、いるんじゃないでしょうか。

 

(余談1)雑誌の表紙や特集の話

雑誌の表紙・裏表紙、巻頭特集、センター特集…ほんの数ページでも好きなアイドルが掲載されたら購入しちゃうのがファン心理です。
ご存知のとおり紙の雑誌は結構厳しくて発行部数が落ち続け休刊・廃刊なんてのも珍しくありません。そんな中、出版社が「このアイドルを掲載しよう」と考えて組んだ特集が当たって売上部数が伸びたら、またはSNSでの反響が大きくて雑誌の知名度が上がったら……「次また起用したいね」となる気がしませんか。しますね。(たくさんのアーティストやモデルさん、俳優さんなどが掲載されるので特定の誰かのおかげだけとは言えないと思いますが…)
逆に「SNSで発売前にスキャン画像が共有されてしまい、雑誌は売れなかった」「まったく反響がなかった」としたら…次からは候補から外してしまうかもしれません。
実際に表紙&特集候補が2組いた場合、「Aは過去の発行部数よかったよね」「BはメンバーがRTで告知してくれて盛り上がったよね。ツイートのインプレッションがすごかった」という検討がなされることがあります。企業が何かを採用するとき「好きだからこっちね」ということは100%ありえません。「過去どのような数値結果を出していたか」という指標に基づいて決定します。
※フリーペーパーや持ち込み企画的なもので、アーティスト側(事務所側)が費用を出す場合はこの通りではありません。クライアントが費用を出して、そのとおり作って満足してもらえればそれでよく、発行元としては売れなくても関係がないので。

 

(余談2)マーケティング戦略におけるSNSの存在

近年、私たちが思っている以上に、企業は各種SNSでの反響を気にしています。
これは単にツイートが何万RTされてバズったという分かりやすい指標だけではなく、どのリンクが何回押された・会員登録or購入につながった、動画サイトならどの国からの再生数が多かった、Web記事ならどこからの流入が多かった(サーチエンジンなのかSNSなのか etc)、Viewが伸びたのはどんなタイトルをつけてどんな内容の記事だったかなどさまざまな反応を含んでのものです。
このあいだちょっとABテストについてツイートしたことがあったんですが…

今日本でスキズを売り出すには、誰がどう考えてもJ.Y.ParkさんとNiziUの名前を使わない手はありません。うちの還暦を過ぎた親ですら知ってるんです。そりゃもう日本でのプロモーションでViewを伸ばそう(=知名度を上げよう)&SNSでバズらせようと思ったら欠かせない存在です。
どんなWebメディアかにもよりますが(K-POPアイドルファンしか見ないものか、ナタリーやリアルサウンドのように音楽・エンタメ好きが見るものか)実際にABテストをしてみたら確実に先ほど挙げた名前が入っているほうが数値が出るでしょうね。
とはいえ…ファン心理ではバーターのようで複雑な気持ちにはなると思います。そして既存ファンの気持ちを考慮しないプロモーションがよいとも思わないので、ここが通常の製品やサービスの広報とは違って、アイドルのプロモーションの難しい点でもあります。

余談ですが(余談が多いブログだな)私が画像や動画をツイートするとき公式のURLを必ず明記するor先に公式をRTするのは、公式のコンテンツの閲覧数や再生数を伸ばしたいからです。動画を部分的に切り取ってツイートに貼り付けるときやインスタの投稿でも必ずです。
公式はインフルエンサーのアカウントのRTがどれだけ伸びたか、グループ名を含んだハッシュタグや関連する単語がトレンド入りしたかなどを参考にしている可能性はあります。ただ、施策や企画を立てるときの根拠(の一部として利用するの)は、公式TwitterYouTubeでの数値です。
いちファンとしてはこういう言い方はしたくありませんが、コンセプトやメンバーによって、ツイートであればRTや♡の数、動画であれば再生数に差がありますよね?コンテンツを作る視点では、そういうものもすべて今後の施策の参考にしているはずです。誰をどこにどんなコンセプトで起用するか、どう売り出すかは公式が出したコンテンツに対する反響が重要なんです。
私は会社の公式Twitterの運用を一部担っているのですが、たとえばツイートのインプレッションを見て「この内容がよく見られてるから、来月はこのコンテンツを重点的に増やそう」という検討をします。なのでもしよければ、情報元の記載と閲覧・再生は公式でというのを頭の片隅にでも置いておいていただけると嬉しいです。

 

副次的に不利益を被るのは私たちである

ここまでは、利益を出せないとアイドルたちの活動にも影響が出るかもよという書き方をしてきましたが、「そうは言っても別に広告や雑誌が出なくても無料で動画も見れるし、音楽番組も見れるからいいよん」「CD出なくてもデジタル配信さえあればいい」て方もいるかもしれません。
さっきちょっと“日本市場から撤退”なんていう話もチラッとしたのですが、実はそこまでいかなくてももっと前段で私たちが被る不利益があります。なので、ここからはもう少し身近な例で考えてみましょう。

 

日本語字幕は当たり前ではない

そもそも事務所としては、“プロモーション費用をきちんと回収できる(見込みのある)アーティストを推す、そして投資額を増やす”というのは絶対的にあると思うんですよね。
もちろんこれから売り出したいとか、ちょっと低迷してるからテコ入れでプロモーションすっかとかもあるんですが、少なくともスキズの場合はK-POPファンのあいだでグループ名や『神メニュー』なんかのパフォーマンスは知られているし、海外のファンも多い。なのでこれから売り出したいというよりは、ファンを拡大したいのほうが近いと思います。
スキズはありがたいことに公式から出る動画のほとんどに日本語の字幕がついています。多分現時点では、日本語字幕をつけるメリットがあると捉えていいのかなと思ってるんですが、これって当たり前ではなくて、同じ事務所のグループでも日本語はつかないことがあります。Twitterでも言ったことありますが他の事務所だと英語字幕のみのグループも多いです。
字幕つけるのもタダではないので(社内の担当者がやるにしても外注にしても)もし思ったほど日本のファンが増えなくて「日本からの動画再生数がこの程度なら今後はもうもうわざわざ日本語字幕つけんでええな」「むしろインドネシアからの再生数がものすごいからインドネシア語の字幕にしよう」ってなる可能性、あると思ってもいいんじゃないでしょうか。分からんけども。韓国語や英語が堪能な方は除いて、私は日本語字幕がなくなると困ります…!!
あと事務所が出しているコンテンツではないので若干話はズレるのですが、VLIVEが実はすでにこの兆候があって、ここ最近は公式が日本語字幕をつけることはありません。そしてMwaveで配信されるMeet&Greet、これはリアルタイムで字幕が表示されるのですが、スキズの7月の配信では選択肢に日本語があったのに、10月の配信では英・中のみでした。これが何を意味するか…分かりますよね。
また、先日はVLIVEでフィリピン限定の配信がありました。VPN使えばどこからでも見れる…かもしれませんが、課金コンテンツになるとそれも難しくなるかもしれません。

 

ツアーの候補地に日本が入らなくなる?

これは完全に日本のアーティスト(ライブハウス、ホール、アリーナ、ドーム、スタジアムなどすべての規模のアーティストを応援したことがあります)を追いかけてきた経験からくる憶測のため、K-POPにも当てはまるか分からないので話半分で聞いてくださいね。
会場を押さえるのにはお金がかかります。コロナ禍でライブが中止になり中小の事務所がもっとも苦しんだのは、保険の降りない会場費用がすべてただの出費(チケット代払い戻し、グッズも現場で売れない、チェキなど接触イベントもできない)になって莫大な赤字になってしまったことです。
スキズは日本では代々木第一体育館やぴあアリーナMMあたりのアリーナクラスの会場でライブをするアーティストです。コロナの影響で予定されていた大阪と横浜の公演は中止になりましたが、チケット代、しっかり戻ってきましたよね。
さて、アリーナクラスの会場を押さえるの(しかも土日という激戦区)いったいどれくらい費用がかかると思いますか?ちょうど横浜アリーナが料金表を公開してくれているので見てみましょうか。

横浜アリーナ 使用料金表

ライブ当日に会場を借りるだけで土日は650万円だそうです。意外と安い?いやいや…当日に会場をただ借りただけではダメですよね。場合によっては前日も借りて設営も必要になると思います。
セットや音響・照明機材の設置、アイドルやスタッフさんの控室、ケータリング…素人がぱっと浮かぶだけでもこんな感じ。当日のチケット確認や整列スタッフの配置などもおそらく会場側(もしくは外部の指定業者)に依頼するんじゃないでしょうか。人件費もものすごく掛かりそうですね。設備や備品についてはページをスクロールしていくと見れますので気になる方は見てみてください。
さらにライブ開催は芸能事務所と会場だけで完結するものではありません。イベンターやプロモーター、チケットプレイガイドなどなど…それらの企業に業務を委託するとき、もちろんお金を払います。そう思うとかかるお金が650万円というのはあまりリアルな数値ではないことが分かると思います。

ということで、もうちょっとリアルな数値を持ってきました。さいたまスーパーアリーナBUMP OF CHICKENがライブを開催するのにかかる費用と利益について詳細に書かれている記事です。

BUMPのライブ主催の費用と利益“チケット代は何に使われるの?”

条件で本当に差が出てくるので一概には言えませんが、上記の記事から引用させていただくと…

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会場使用料のみは1,500万円で試算しているようです。そこに諸々の費用を入れて、約2億7千万ほどの支出としています。収入はここではチケット代と決めて計算していて、約3億ほどの収入です。各数値の詳細は記事内もご参照ください。
これはもし1日だけライブをした場合の算出とのことで、設営で前日も借りていると(その日はチケット収入はないので)もっと利益は少なくなります。それにしてもとんでもなく大きなお金が動きますね…そりゃ社運をかけてライブをすると言う事務所があるわけです。。

K-POPも同じかは分からないのですが、国内では会場が埋まらなかったり、グッズ売上がないとライブ開催は赤字という話もよく聞きます。
では、そう遠くないとは言えわざわざ飛行機で日本に来て、もし満席にならない、グッズも売れないとなったら、次のツアーで日本を候補地から外す選択肢もあると考えられないでしょうか…?
ファンがめちゃくちゃ増えたらそれだけチケットも激戦になります。悔しい思いをしたこと、私自身もあります。でも「おっ日本人のファンめっちゃ増えてチケット倍率高くなってるやん!もっと日本活動力入れて、今度はドームでやろ!」って思ってほしくないですか!?私は思ってほしい。ドームに立つスキズめっちゃ見たい、なんならスタジアムで単独公演するスキズもめっちゃ見たい。
…だんだん話がズレましたが、ともかく企業は、動員を増やしてチケットをさばいてグッズを売りまくって、少しでも会場費などで出ていったお金を回収したいと考えています。

 

日本向け楽曲はなくなる可能性も

「CDがリリースできなくなる」というと今のスキズに対しては飛躍しすぎて妄想レベルかもしれませんが、日本でファンが思ったほど増えないと、少なくとも“日本オリジナルやJapanese ver.のリリースはなくなる可能性がある”というのは頭に置いておいてもいいかなと思います。
Japanese ver.の是非は別にしても、日本オリジナル曲ってやっぱり嬉しいじゃないですか。リップサービスでもプロモーションでも本心でも「日本のファンの皆さんを思って歌いました」って言われたら推し甲斐があるってなもんです。日本語を一生懸命喋ってくれる姿も見たいですし。だからやっぱり日本は売れる市場だと(以下略
そして日本向けに楽曲を出さないということは、日本の音楽番組に出なくなる(頻度が減る)と考えてもよいでしょう。スキズは本国でリリースした楽曲を日本の音楽番組で披露したことはありません。イルデのときもTOPリリースもそしてALL INリリースも“日本オリジナル楽曲またはJapanese ver.の披露”です。前述のとおりセットや照明、中継の準備を整えて、スタッフさんを配置して、1曲パフォーマンスするのにもお金がかかります。その費用がプロモーション費に含まれるのも日本の音楽番組に出ることに価値があると考えているからです。
SuperMは日本向けではない楽曲を2回Mステで披露していますが、彼らは韓国を拠点にしていない(コロナで今ちょっと微妙ですがアメリカが拠点だったはず)ので少し事情が違います。事務所も違うので単純比較できませんしね。戦略が全然違うと思うので。
 

ファンが増えたら推しが1位を取ったりしやすくなるかも

これはちょっとテーマからはズレているかもしれませんが、ファンが増えたら単純にスミンしたり投票したりする人が増えますよね。100人増えて100人全員がそれらを実行してくれるとは限りませんが、もしかしたら超富豪が1人いて惜しみなく全力投球してくれるかもしれませんし、30人は投票を熱心にやってくれるかもしません。
このあいだこんな記事を書きました。

kuraxkura.hatenablog.com

1位になるってやっぱり本人たちも喜んでくれるんで、できればこれからも何回でも取らせてあげたいじゃないですか。それには大きなファンダムが必要なんです。リリースタイミングなんかに左右されないくらいの。また、各種音楽賞の受賞もファンが多くてマイナスになることなんてありません。
もし、万が一、ですよ。アイドル本人たちが「僕たちはファンとアットホームな関係でいたいからずーっとライブハウス規模でやっていきたい」と言ったら話は変わってきます。ファンなんて増えなくてもいいです。
でも…私が好きなスキズはそういう“ファンと近い距離で”という気持ちも持ちつつ、もっともっと高みを目指していく、そして目指すべきグループだと思っています。

 

新規ファンへの拒否反応が実は感情論とも言えない理由

ここまでは散々「ファンなんてなんぼ増えてもいいですからね」というようなことを言ってきましたが、それはあくまで企業活動の視点からそう言っているのであって、感情はまた別というのも理解しています。
私もいまでこそもうこんな歳なので「推しの顔ファンが増えたらペンサ当たりにくくなっちゃうじゃん!」「同担は無理です」なんて気持ちすら持たないですが、若いころジャニオタだった私はそういう気持ちもたくさん知っています。笑 だからそういう気持ちを持つなと言いたいわけではありません。仲間内で共有したり、つらい気持ちを吐露するのは悪いことではないです。そこだけは誤解しないでいただきたいと思います。
ただ、もしここまでの内容を理解できたのであれば、新規ファンを増やすことで利益を出して、結果的にアイドルが不自由なく活動できる資金となっていることを頭の片隅においていただければなと思います。
一例ですが、韓国の音楽番組はすべて事務所持ち出しだそうです。お金に余裕がある事務所とない事務所、どちらがいいかは明白です。事務所(やグループ)によってセットや演出や衣装に大差があるのは見ている方は知ってますもんね…。

しかし、増えて困るファンというのもいます。単推しの他メンdisや、それに留まらず他のアーティストやアイドルをdisるファンです。これはもうファンではなく害悪です。心の中やクローズドな環境で言うのは勝手ですが、音楽番組の共演者に対して“推しのアイコンのまま”誹謗中傷とも取れる発言をする人などは一発通報&ブロック案件です。ファンの民度の低さは、結果的に推しグループの評価や評判を下げます。
そして、実は感情論かと思いきや、厄介なファンや面倒事が多いアーティストは起用を避けるという現実があります。もちろんそれを補ってあまりある莫大なメリットがある場合は別ですが、昨今は広報的にはSNSの炎上はもっとも避けたいので火種になるものはそもそも使わないのが鉄則です。これは推しグループの活動に大ダメージです。
お気づきかもしれませんが、そういうファンって新規に限らないんですよね。古参でも厄介はいますし、新規でもきちんとしてる人はいます。自分への戒めも込めて、どこに出ても恥ずかしくないファンで在りたいと思います。

 

補足:プロモーションと企業利益の話

話は前後しますが、少し経済の勉強がてら「そもそもプロモーションってなんやねん」という部分を簡単にお伝えしたいと思います。まずは言葉の定義から。

プロモーションとは、消費者の購買意欲をあおる活動という意味である。
プロモーションと似た意味の言葉に「PR活動」「マーケティング」などが挙げられる。新規開拓から既存顧客への継続的な働きかけまで、プロモーションという言葉が使われる場面は広範囲にわたる。
プロモーション活動は、商品や人材を売り込むために行う広報活動の総称のことである。
最近では、プロモーション活動において、インターネットユーザーを主なターゲット層に切り替える企業が増加している。

Weblio辞書より一部抜粋)

なんとなくイメージしてたものと合ってましたか?
今回のスキズの日本ミニアルバム『ALL IN』の活動でいうと、前述のルミネエストジャック、渋谷や新宿をはじめとした全国のCDショップでのパネル展やコラボ企画、日本の音楽番組・朝のニュース番組出演、CanCamやminiなどの雑誌掲載、公式アカウントでのSNS更新などですね。(厳密にはもっとあると思うのですがファンに見えてる部分ではこんな感じかなと)
費用を払うこともあれば、出演・掲載料をもらうこともあれば、お互いのwin-winてことで費用が発生しないこともある…と契約形態によりいろいろだと思いますが、どちらにしても事務所には“このグループにこれだけ費用をかけられる”という予算があります。それは半期前なのかもっと前なのか、企画段階で決まっています。
その予算というのは“これだけ使ってプロモーション活動を行った結果、これだけの利益が見込める”という数値目標も含みます。1,000万円予算があるから1,000万円全部使い切って終わり!ではなく、1,000万円使って駅に広告掲出して、企業コラボして、CD販売のためにTVCM打って…結果的にCD販売数が前回の1.5倍になりました!それにともなって既存のCD(たとえば『SKZ2020』とか)の売上も伸びました!目標としていた利益の102%達成できました!やったー!という感じですね。めっちゃ簡単に書きましたが。
で、ここに注目。“利益の102%達成”とは、ざっくり言うと見込んでいたプロモーション費用(ここにはスタッフさんや外部業者さんへの発注、オフィスやスタジオの光熱費、ロケ地の利用料、アイドルたちのお給料、もろもろ間接費や雑費も含む)を引いても売り上げたお金のほうが多かった!しかも目標数値よりちょっとよかった!ということですね。想像よりもっと黒字になったと捉えてもらってもよいかもしれません。
厳密には…もっと経済用語的には複雑なのですが…興味がある方は以下の記事で売上と利益について分かりやすく書かれているのでぜひ。損益分岐点とかも頭に入れておくと、企業活動への理解も深まると思います。

売上高とは?利益との違いや損益分岐点について | ビジドラ~起業家の経営をサポート~

これがもし見込んでいた利益を達成できなかったら…利益が出ないよりもっとヤバいのは思ったよりプロモーション効果が出なくて赤字になってしまったら……
普通の企業なら次からプロモーション費用を減らしたり、広告を出さなくなったりします。効果が薄いプロモーションはやめて、他の施策を考えます。そして、もしその市場にもう旨味がないと完全に判断したら別の市場を開拓するかもしれません。
本文では分かりやすいよう、“アイドルたちの活動を潤すためにファンを増やして利益を上げる”と言いましたが、企業には大勢の社員、そしてそこから仕事を貰っている多くの関連会社・業者がいます。利益が出ないと(極端な話ですが)社員にお給料が出せず、外注への仕事も減らさなければいけません。いい企画やコンテンツを出す前に“社員を食わせる”という最低限のラインをクリアする必要があるのです。

 加えて、企業というのは、どうすれば“できる限り費用を押さえて効果を最大化できるか”を考えます。いわゆる費用対効果を高くするにはというやつですね。

マーケティングでのROI(費用対効果)の考え方 | マーケティングオートメーション List Finder(リストファインダー)

それを実現するために私が所属している小さなベンチャー企業ですら、コンサルタントや広報のプロに入ってもらってサービスの方向性を検討します。大企業にはマーケティング専門の部署があるはずなので、プロモーションを打つ際にはユーザー動向を詳細に分析して、企画や施策を検討しているはずです。そこで「もう日本市場には旨味がないね」とならないためにも我々はCDを買い、MVを再生し、SNSを盛り上げる必要があるのです――…(誰?)
まあ日本ってまだまだ音楽の市場としては大きくて、デジタルが浸透した昨今でもCDやDVDを買うほうなのでそう簡単には捨てないとは思いますが、将来は分からないですからね。

世界の音楽市場、191億ドルで9.7%成長。音楽ストリーミングが牽引、日本の音楽業界は(ジェイ・コウガミ) - 個人 - Yahoo!ニュース

あと本文ではインドネシアを例にしましたが、人口で殴ってくる中国やインドの市場も有力かもしれません。ただ、政治的・文化的視点からプロモーションしづらいかなぁとも思うので、労力に見合うだけのリターンがあるかはこれからぼちぼち検討していきそうですが…。ユーザーから見えてる以上に企業はもっと先を見てるので、すでにいろいろやってるのかもしれないですね~。

 

まとめ

はい、ここまで読んでくださった猛者はいらっしゃるでしょうか。思った以上に長くなってしまいました。ちなみに毎度ながら、完全に趣味で書いているのでどこかからお金をもらってるとか一切ありません。でも仕事の記事書くより楽しい~😂(怒られろ)書いた記事をTwitterで紹介することもありますが、ほんとにただの趣味です。
この記事で言いたかったのは、「いろんな感情はあるだろうけど、企業がプロモーションをするのには利益を出すという最大の目的があって、そのためにはファンは見込み以上に増えたほうが結果的にコンテンツを享受する私たち既存ファンにもメリットがあるよ」ということでした。
今回は企業活動にフォーカスしたため、やたらと“利益”という単語を使いましたが、ファン活動は自分ができる範囲で楽しく!が鉄則です。SNSでたくさん愛をツイートするもよし、お友達に推しグループを広めるもよし。お金は持ってる人が使ってくれます。逆にもし時間に余裕があるのであれば、時間がない人にはできないことをやってみるもよし。私も学生時代はCD全形態買うなんて絶対無理でしたが、親に好きなアイドルをアピールしまくってCD買ってもらってライブ一緒に行ったりしてました。笑
事務所が日本プロモーションに力を入れてるうちに「新規ファンの方ですか!!어서오십시오!!」と迎える気持ちを整えておきましょう。日本市場から撤退されてからでは遅いですからね。お付き合いくださり、ありがとうございました!

*1:パブリックサーチとは、インターネット上のウェブ検索エンジンなどで著名人や友人などの特定他者の名前を検索する行為の意味で用いられることのある語である。いわゆるエゴサーチの他人版、のような位置づけである。(Weblio辞書より)

*2:ブランドやメーカーなどが芸能人を起用して広告を出すのはまた別の話です。その場合、芸能人側(事務所側)に出演料が入ります。BTSクラスになると広告毎に約2~3億ほどの出演料が入るのだとか。そのくらい出せる大企業じゃないと起用できないとも言えますが。