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【感想】ただ、輝ける瞬間を待っていた:アイドルオーディション番組に一石を投じた『PEAK TIME』感想 - Part.1 -

現在(2023年4月6日時点)放送中のJTBC制作の韓国アイドルオーディション番組『PEAK TIME』。この番組の魅力に取り憑かれている方は少なくないだろう。番組内容をCSテレ朝のサイトから一部抜粋する。

すでにデビュー経験のあるアイドルたちがワールドワイドアイドルの席を巡って戦いを繰り広げる。
既にデビューをしているものの、色々な事情で活躍が出来ていない才能と実力を持ち合わせたアイドルグループ24組が最高の「PEAK TIME」をめざして彼らのすべてで戦い抜いていく。

同時期に放送中の練習生からデビューメンバーを選ぶ『BOYS PLANET』とは大きく異なり、上記のとおり“すでにデビュー経験のあるアイドルたち”が出演している。そう言うと、韓国サバイバル番組が好きな方は『Road to Kingdom』や『KINGDOM』を思い浮かべるかもしれない。確かに近しい部分もあるが、『PEAK TIME』に出演しているのは、K-POPが好きだと言う人々であってもほとんどがその名前を知らないグループだ。
実力・ビジュアルはもちろん、時には知性や人間性まで求められる、K-POPアイドルという職業、もっと言えば、生き方について、ファンであるわたしたちも考えを巡らせたことがあるだろう。グローバルに活動するのが前提の過密スケジュールをこなし、次から次に大型新人が現れ、比較され、プライベートも守られない特有の文化の中、それでもステージに立てば観客を魅了するパフォーマンスを繰り広げる…それが、K-POPアイドルの“当たり前の姿”だと思っていた。

わたしは『PEAK TIME』を見て、また違った軸のK-POPアイドル界の厳しさを思い知ったように思う。もちろんテレビ番組である以上、これまでのサバイバル番組同様にわたしたちは編集された映像を見ている。しかし、彼らの言動から溢れる切実な想いや、いわゆる“人気グループ”と遜色のないステージを見て、涙を堪えられない場面がとても多い。どれだけこの番組に心打たれたか、うまく語り尽くせるか分からないが、とにかく書き始めてみようと思う。

※わたしは歌やダンスに詳しいわけではなく、K-POPファン歴もようやく4年目に入った新参者で、この感想も完全に主観のみで書いています。また、結果のネタバレもふんだんに含みます。ご了承ください。

 

 

本編感想前の前置き

『PEAK TIME』との出会い

番組を見ているフォロワーさんが多いなとは思っていたが、ちょうど『BOYS PLANET』を見ていたので、同時期に2つのサバイバル番組を見るのは負担で手を出していなかった。それが3Roundのオリジナル曲を集めたアルバムをApple Musicでなんの気なしに聞いてみたら、いずれの曲も非常に好みで、心惹かれた。

しかもちょうど水曜日の夜を前にしており…これはリアルタイムで見るしかないとなった。はじめてのリアタイ視聴は3月29日 8話放送回。いきなり見たくせに、ドハマりした。

これはツイートもしたので、また繰り返しになってしまうのだが、少し前におすすめに流れてきた「大手事務所のグループはさすがエリートで(ドームやスタジアムで公演するような)素晴らしいアイドルである」という誰かのツイートが、ずっと心に引っかかってモヤモヤしていた。
わたしは少しマイナーなアイドルグループも好きだし、その子たちのスキルが決して低くないこともライブで見て知っている。「大手事務所でデビューできなかったエリートじゃない子たち」と思ったことは一度もない。でも世間的にはK-POPアイドルというと、大手事務所に所属していて、CDを100万枚売ったり、Billboardのチャートに入ってきたり、そういうグループを指すのだろう。もちろん大手事務所に入るのは非常に難関で、さらにそこからデビューグループのメンバーになったとなると、ビジュアルや運だけではない、とんでもない努力の上に成り立っているスキルがあるということを否定はしない。事実、大手の練習生であってもデビューの機会には恵まれず、中小事務所に移ってデビューをしたアイドルも大勢いる。

ただ、いちファンである自分がこんなことを言うのはおかしいが、正直そのツイートを見てとても悔しかった。彼ら・彼女らの頑張りが、意地が、ステージに対する執念が、切実さがバカにされたようで。もちろんこの感情は『PEAK TIME』を見る前のものだ。だから、『PEAK TIME』に出会って1話から見始めたとき驚いた。そんな自分の気持ちが、ここに詰まってるじゃないかと。

実はもともとは「アイドルは自分で選択した職業だ。どの事務所に入るかで運命が決まるなんて、昨日今日始まった業界じゃないんだから自己責任だ」という考え方をする人間だった。強引にアイドルにされたケース(があれば)除いて、自ら夢を見て飛び込んだ業界のはずで、言ってしまえば新卒でブラック企業にわざわざ就職し、嘆く人を見たときと同じ気持ちだ。自分で選んだくせに環境に文句を言うのはおかしい。選択を誤った自分を省みるべきだと。
ただ、違うのは、就活は一般的に大卒であれば23歳(成人済)でするが、アイドルの多くはまだ10代のうちにその道へ進むという決断をしているところだ。判断力も思考力も知識もまだまだ十分ではない年齢。アイドルを夢見た子どもたち。きっとK-POPアイドルの世界では何を“正解”と言うのか、会社員なんかとは比べ物にならないほど難しい。それは“正解を選べなかった”と思われたアイドルたちが、この番組を通してそれを否定してくれると確信したからだ。外野が定義する正解など意味がないことを証明してくれるに違いない。

彼らは、ただ、輝ける瞬間を待っていた。出演している中には未熟なグループもいる。いま一歩足りていないアイドルもいる。素人が見ても「惜しいな」と思うステージもあった。それでも機会やタイミング、運をほんの少し掴めれば、輝くことができる。そう思わせてくれるアイドルも大勢いる。
1話の冒頭、審査員の方の「この番組ができてよかった。知らぬ間に逸材を見逃すところでした」という言葉が字幕で表示される。まさにそれに尽きると思った。それを知ることができた『PEAK TIME』という番組にわたしは心から感謝している。

番組の概要とルール

『PEAK TIME』では、TIMEの名の通り、予選を勝ち抜いた(元は70グループもいたらしい!)23チーム+ソロ選抜で合計24のチームが、元のグループ名を隠し「チーム1時」「チーム2時」…といったように時刻を名乗り戦うサバイバル番組だ。隠すとは言ってもグループの公式Twitterなどでは宣伝もしているので緩やかな決まりであるようだ。
すでに9話の放送まで進んでいるため、まずは1時~24時までがどういったグループなのか見ておいてもよいだろう。Abemaのまとめ記事を紹介する。もし元のグループ名を伏せたまま番組を見たい方は読み飛ばしていただければと思う。

times.abema.tv

サバイバルラウンドでまず16チームに減らされる。次の第1ラウンドではステージは披露するが脱落者は選ばれず、第2ラウンドで10チームとなった。現在第3ラウンドが放送中だ。
最終ラウンドで残った上位6チームは『PEAK TIME』ツアーコンサートに参加できる。そして優勝した1チームには、3億ウォンの賞金・アルバムの発売・グローバルショーケースの開催が特典として与えられる。ほぼすべてのグループが資金繰りが苦しい中で活動しているためこの特典はかなり大きい。

視聴はAbema TVで

Abemaの回し者ではないが、リアルタイムの放送でも綺麗な日本語字幕がついている。1~3話は常に無料で見れるし、『PEAK TIME』を見るならAbema TV一択だろう。

【日韓同時・独占配信】PEAK TIME @ABEMA で無料配信中 https://abema.app/5wvA 

公式YouTubeチャンネルにはダンプラやビハインド映像も上がっているためチェックしておきたい。(と言いつつわたしもまだ全然追いきれていない……)

 

#1~2:サバイバル ラウンド

1話の頭に出場グループについての説明シーンが有る。この番組の出場資格はデビュー済みアイドルであること。わたしたちは(ともするとアイドル自身も)デビューがゴールかのように思うが、実際はそこからがスタートであり、「生き残ったグループはわずかでした」という言葉が突き刺さる。デビュー後活動しても鳴かず飛ばずのグループ、契約が切れ解散もしくは活動休止状態になっているグループ、そういった存在がK-POP界には多く存在する。
審査員のひとりであるシム・ジェウォン氏が「人は気楽に“売れなかった”と言う。でも彼らの人生はこれからです」にそのとおりだなと深く頷いた。10代・20代でアイドルになって、30代・40代…それ以降も同じように活動ができるかどうかは分からない。これは人気が出たグループでも同じだ。彼らの人生はまだまだ長い。

出場グループはデビュー年と活動状況により、新人セクション・ブースター(現役)セクション・活動休止セクションの3つに分けられている。この番組は「実力で勝負する」がテーマとなっているため、デビュー年やグループ名を忘れて、新たなグループ名(時刻)を名乗り全員が同じ土俵に立っている状態にするという意味合いもあるようだ。

サバイバルラウンドは、審査員評価のみで結果が決まる。ここでの視聴者投票はない。評価できると思ったグループには、手元のランプを点灯させる。8人の審査員のうち3人以下であれば脱落、4~5人であれば保留(のちに審議)、6人以上で次のラウンドへ進める。単純明快だ。
ここで勝ち残ったグループは第1ラウンドに備えて、専門家のレッスンやメイクが受けられるとMCが告げた。それを聞いて出場者たちは喜びに叫んだ。大手の事務所や人気のあるグープには当たり前のことが彼らには叫ぶほどうれしいことなのだと節々で感じられるシーンがあるが、それもこのひとつだ。

『PEAK TIME』の特徴として、出演グループ同士の声の掛け合い・応援し合う姿が随所で見られる。サバイバル番組においてこれほどまでに互いに熱い声援を送り、ライバルにも関わらず熱心にステージを見守り、励まし合うことはあるだろうか?
そして、別の特徴として、彼らが抱える課題・活動がうまくいっていない背景にも番組内で言及する点が挙げられる。「同時期のデビューグループ43のうち最下位だ、何をしても売れるグループがあれば、何をしてもダメなグループがある」と語り、「僕たちの存在を知らしめたい」と決意を表明し、「初めてのビッグチャンスです」「たった1回のチャンス」とマイクを強く握りしめる。どのグループもこのチャンスを逃すことはできない。最後のステージになるかもしれないのだから。
普段わたしが追いかけているグループでここまで切実なグループはいない。当然、人気の高いグループには、彼らとはまったく違った種類の苦悩があることも知っている。それでも、機会にすら恵まれない状況を脱しようと、一世一代のチャンスを掴もうとする彼らの姿は、普段のファン活動では決して得られることのない次元で見る者の心を揺り動かす。

以降、放送されたすべてのグループに事細かに触れていきたいが、時間も厳しいので特に残しておきたいグループに絞って感想を軽く書いていく。

チーム 14時

このあとも大注目していくことになる14時。リーダーのジュンヒョンくんは特に注目だ。2020年9月デビューで音楽番組でも何度か見たことがある子たちだ。ミニアルバムのリリースも少なくなく、楽曲も多い。そのため見ているグループから「羨ましい…」という声も漏れていた。
サバイバルラウンドでの14時は、2名がコロナで欠けており、苦しい中でのパフォーマンスとなった。なんとステージ披露の前日に2名の欠席が決まったそうだ。それまでも代わる代わる罹患しており、練習は相当大変だっただろう。
14時が披露したのはGOT7の『Never Ever』カバー。『PEAK TIME』の見どころは、多くを生歌でパフォーマンスをおこなうところにある。歌って踊るのは想像以上に大変で、これをこなせるかどうかが、一流と二流とを分けるひとつの目安と言っても過言ではない。「生歌がしっかりしている」と見ているグループのメンバーからも声が上がっていた。力強いパフォーマンスと、安定した歌声。14時は基礎がしっかりしている。5つ点灯で終わったが、合格しそうだなという感じがあった。

チーム 13時

エネルギッシュな若手グループ。こちらも音楽番組で見かけた記憶がある。プエクに出ていた子たちが出場グループにも何名かいる。13時のリーダーは3回デビュー経験をしているそうだ。メンバーの「デビューしたら超多忙で睡眠時間もなく毎日朝から晩まで仕事かと思ったけど、思った以上に忙しくなくて想像とは違いました」の言葉が重く耳に残る。
13時が披露したのはSuperMの『Tiger Inside』。わたしがスパエムの楽曲でもっとも好きな曲で、過去うまくカバーしたグループをほぼ見たことがない。それはこの歌とパフォーマンスが相当に難しいからである(SMのアベンジャーズグループなのでこなせるんだな…と思う)ただ、彼らはこれまで見た中では相当によかった。ここまで歌とダンスをやりこなせたグループはなかったと思う。7つ点灯し無事第1ラウンド出場決定となった。

チーム 8時

のちにわたしが4月に日本で開催される単独コンサートの夜公演チケットを取り、そのあと開放された昼公演の注釈付き席まで取ることになったグループだ。8時のステージは生で見たい、番組を通して強くそう思った。
彼らはスキズと何度か活動が被っており、音楽番組でも何度も見かけている。今回出場グループの中では、8時と18時だけ以前から曲をApple Musicに入れて聞いていた。ただ、ここまでステージがうまいとは気づいておらず、今まで惜しいことをしたなと思うほど、彼らのパフォーマンスは魅力にあふれている。「なぜ僕たちの魅力をわかってもらえないのか」という言葉が刺さる。彼らはこのとき、まだ単独コンサートを開催したことがない。コンサートをして両親を食事に招待したいと語った。
8時が披露したのはATEEZの『The Real』カバー。野心とエネルギーが溢れる。もともと曲が好きなので見る目は厳しくなるはずなのに、「なんて楽しいんだ……!!」と心が踊った。オーディエンスを巻き込む魅力。これこそがライブだ!と歌と踊りで見せつけられ、もう8時の虜になってしまった。納得のオールピックである。
ステージ後にリーダーが「パフォーマンス中にメンバーの顔を見たらみんな幸せそうで。僕と一緒にやってくれてありがとうとメンバーに伝えたいです」と言い、オーディエンスにも感謝を述べていた。全体を通して、なぜ成績が伴わないのかもっとも謎なグループだと首を傾げざるを得ない。

チーム 21時

グループの誕生は2012年。オリジナルメンバーは全員脱退し、グループ名はそのままに新メンバーでのデビューという形を取っている。(EXILEか……?)日本人メンバー2名はほぼ韓国語ができない。「赤ちゃんでした」と言われていた😂
21時が披露したのはBTSの『Go Go』。ほとんど活動歴がないはずなのに、自分たちの魅力が伝わる良いステージだった。赤い衣装の子、歌がうまい。…このシウくんがのちに才能を発揮するメンバーである。

チーム 5時

平均年齢19.6才。03・04lineで構成されている最年少グループだ。この子たちがデビューしたサバイバル番組は(見てはいないが)まだ記憶に新しい。音楽番組でも見た記憶がある。まさかこんなにすぐサバイバル番組に出るとは。
5時が披露したのはEXOの『Growl』。EXOはみんなカバーしたがるが、カッコよく見せるのが難しいパフォーマンスも多い。楽曲も耳馴染みがいい分、少しでもズレがあると聞いてる側の違和感も大きくなる。ダンスブレイクでの魅力はとても伝わってきた。
それにしてもJYPやSMといった大手事務所のグループの楽曲が多いのは、知名度がありみんなが好きな曲が多いというのもあると思うが、なんだか『PEAK TIME』で選ばれると若干の皮肉さを感じてしまう…。(それを言ってしまうと審査員もそうなのだが…)

わたしが何度もこのあと泣かされることになる、ライアン・ジョン審査員、ここでは厳しいが数々のアイドルを見てきた方だからこその言葉を彼らにかけていた。悔いが残るステージだったと泣くメンバーを見て「そういう姿は見たくない。僕は出演者みんなの成功を願っているし、兄になった気持ちで話をしたいんです。アイドルになれない人も多い中でさっき君が見せたようなパフォーマンスに後悔して泣く姿は悪いけど見たくない。出来に満足して泣くのはいいんです」このあとも言葉は続くが、この方は必死に食らいつき、真剣に愚直に努力し、満足したステージを見せてくれるアイドルが好きなんだなとのちのち分かってくる。

『PEAK TIME』の3つ目の特徴だとわたしが思っているのが、審査員の愛と暖かさを感じる点だ。みんなそれぞれの分野のプロ(現役アイドルもいる)なので厳しいことも言うが、一緒に楽しみ一緒に笑い、泣き、心からアイドルたちのことを思っている。そうでなければ見ている側がこんなにも審査員たちの言葉に納得し、泣き、昨日今日知ったアイドルに対して思いを巡らせることはなかった。
批評でも「なぜボタンを押さなかったのか、どこが惜しかったのか、どうしたらもっとよくなるのか」を述べてくれることが多い。反対に褒めるときはこれでもかと褒めちぎる。単に番組を盛り上げるためのパフォーマンスではなく、真摯な言葉だから響く。

チーム 15時

15時は活動休止セクションだ。ほとんどの参加者が事務所に所属していない。最後の活動が何年も前のグループ。「歌う場所に飢えていた」「最後の機会だから必死でやろう」「これを逃したら、全員で歌やダンスを披露する機会は訪れない」といった言葉から、新人や現役のグループとはまた違った苦労が伺える。彼らの多くは30代前後だ。アイドルに定年はないけれども、人気があり最前線を行くグループを除いて、現実が迫ってくる年齢だろう。
15時は事務所の都合で結成からわずか1年足らずで解散し、メンバー4人が集まったのは4年ぶりだと言う。もとは7人グループ。すでに別の道を歩んでいるメンバーもいて、集まれたのは4人だったそうだ。「解散が決まってお別れ旅行に出かけました」と話し出すメンバー。そこでした約束は“成功した姿で5年後に会おう”。それも、すでに4年が経過した。
パフォーマンスはそんなにもブランクが空いているとは思えないものだった。安定した歌声、若手ほど派手なダンスではないが4人の調和がとれており、1ラウンドへの進出も納得だった。進出が決まったとき、他のグループが自分たちのことのように喜び、叫んでいるのが印象的だった。

チーム 3時

サバイバル番組でデビューし、3年後に契約終了するも、解散が嫌で会社を起こしたグループ。コロナ禍でみんなで話し合いをし、入隊したと言う。ステージは2年ぶり。
3時はエナイプンの『FEVER』をカバーした。正直これは(うまく見せるのが)困難な曲なので選曲の背景が気になった。メンバー間のスキルに少し差があるように感じた。生歌でパフォーマンスするのがとても難しい。曲調的に盛り上げどころを作るのも難しいのだ。
これは少しズレた話だが、やはり絶大な人気を誇る・大きなファンダムを持つグループというのは、パフォーマンスも桁外れの出来栄えだというのが分かる番組でもある。

チーム 11時

彼らは、もっとも記憶に残るグループだ。この記事を書くために1話を見返し、11時がステージに上がってきた段階で涙が出そうになった。
事務所に所属しながら、代表と自分たちしかいないグループで、5人が全員アルバイトをしている。ファンが少ないから気づかれることはないと言っていた。そして番組に出るためにバイトの合間を縫って準備をしたと言う。自給自足のため完全には休むことはできず、深夜に集まることもあったそうだ。活動は定期的にしており、昨年の2月にも曲をリリースしている。Apple Musicで見てみても結構曲が多かった。しかし利益はまったくなかったと言い、それでも「大きな利益を望むわけではない。生活費や交通費、食費はバイトでまかなえば、大好きなステージに立てるし、アイドルを続けられる。以前はそのお金すらなかった。何度もアイドルを辞めようと思った」そう話を続けた。
MCが「いくらアイドルが好きでも、現実を突きつけられることはないですか?」と問いかけたとき、「2月に曲を出したとき、音楽番組の出演が終わって、バイトに行ったとき、ラジオから僕たちの曲が流れたんです。アイドルの自分とバイトをしている自分との格差を感じました」……ここはぜひ実際に番組を見ていただきたい。
彼らはこのあと番組内で人気上位を維持するわけだが、それはステージを見れば分かる。ここで披露したのはセブチの『Adore U(アッキンダ)』。セブチは明るく耳馴染みのよい曲も多く、カバー曲に選ぶグループも多いが(オーディション番組に限らず)、パフォーマンスをしながら歌うのが非常に難しい。カバーステージで一定のクオリティを出せているグループはほとんど見たことがない。
ただ、彼らはやり遂げた。審査員やファンが彼らの物語に心を痛め評価したのではない。切実で情熱的な思いと、確かなスキルが作り上げるステージ。それを評価されオールピックで1ラウンドへ進出したことが分かるだろう。ここでわたしはテファンさんの歌声に惚れる。出だしで心掴まれた。
ライアンさんが話を振られて泣いてしまったのが分かる。「彼らのエピソードがウソであってほしいです。僕もプロデューサーですから、彼らの環境がよく分かります。大変な状況でも夢を追い続けるのは簡単じゃありません」と涙ながらに話していた。つづいて話を振られたソンミノさん、言葉に詰まりつつ、昔の自分を思い出したと。ティファニーさんは、「練習室の環境もよくなかっただろうに」と言った。「あの環境でここまでやれるなら他のグループは反省するべきだな」とソンミノさんがつぶやき、頷く面々。これほどまでに審査員、他のグループ、そして見ているわたしたちの心に多くを残した11時。ステージのあと「夢のようだった」「ドラマみたいでした」と言った彼らがどうか報われる未来であってほしい。

チーム 2時

とにかく元気でエネルギー溢れる2時。Abemaの記事ではデビュー年が2001年となっているが誤りで2021年が正しい。他のグループとはひと味違うヒップホップ感あふれる若手グループだ。ここでB.A.Pの曲をカバーしたのがあとに登場するソロ選抜と関係してくるとは思いもせず……。編曲はメンバーがおこなった。迫力のステージを披露し、オールピックで進出を決めた。
審査員はボタンを押しても厳しい評価をするときがある。「正直オールピックにふさわしいステージではなかった。エネルギーで押し切ろうとしているようで、後半は微妙だった」こういったハッキリと物を言うシーンが多いのも、見ているものの納得感を高めてくれる所以だ。オーディション番組で「なぜこの評価なのだろうか」と疑問を持つのはストレスになる。もちろん専門家とファンの知識や判断力は異なるのだが、『PEAK TIME』では、審査員が「一貫して自らの軸に基づいて評価をする」場面が見られる。隣の審査員と意見が異なっていようとも自分の軸をぶらさない。そこが見ている者に信頼感を与えているように思う。

チーム 18時

3人ともがプエク出身。番組の知名度もあり、デビュー後すぐに音楽番組1位も経験している。しかし将来に悩むことも多く、ステージの上以外は楽しくないと言う。
もともと彼らの曲が好きでたまに聞いていたが、パフォーマンスしているところを見たことがなく(なぜ曲を知ったのか忘れてしまった…)ここで出会って驚いた。
結果は保留となった。ギュヒョンさんは「見送りたくなくてボタンを押した」と言った。このステージの評価に限らず、「彼らが次のステージで成長した姿を見たい」という思いからボタンを押す審査員は少なくない。今回のステージは少し惜しかったが、ポテンシャルを感じさせるチームを救うことが、サバイバル番組にとって正解かどうかは分からない。けれどその場がダメだったらダメだと言わないのも、わたしがこの番組が好きな理由だと思う。

チーム 7時

活動歴は長く、メンバーの変遷を繰り返しながら続いたが、2020年に解散。現在は2人組だ。出演している他のグループの中に元メンバーがいる。新人セクションの1時のリーダーのルオさんだ。「最初は一緒に参加しようと連絡をしたが、再デビューをするから断られた」と言っている。この2人は歌が非常にうまいが、ルオさんもグループの中で(正直ほぼ1人だけレベルが違う)非常にうまいので一緒にやっている姿もちょっと見てみたかった。
披露したのはNU'ESTの『ヨボセヨ』。ステージを見て驚いた。ハーモニーが素晴らしい。2人にも関わらずちっともステージが寂しく見えない。何よりもライブの安定感がすごい。納得のオールピックを獲得した。
評価後のトークでイレさんが「2人ともグループではメインボーカルではなく、サブボーカルだった」と言って驚かせた。そのあとの言葉がとても深い。「活動時は(プレッシャーがあって)歌うことがストレスだった。でもアイドルを辞めたら歌いたくなった」と。歌を楽しむようになって上達した、というのはアマチュアで合唱経験(学生時代の部活動と社会人合唱団)のあるだけのわたしにも分かる部分がある。ステージに立って歌う、しかもコンクールやオーディションといった場というのは、多くの人にとって非常に緊張する環境で、本来の力を発揮するのが難しい。プロであればそんなことは言ってられないと思うが、歌はメンタルに大きく左右されることを身をもって知っている。「楽しむ」というのもスキルがしっかり土台にあるからこそできることで、それができるようになるまでとても努力されたんだろうと思う。

チーム 23時

2010年デビューの彼ら。新人賞の受賞経験もあり、2017年まで活動し契約終了となった、審査員のソンギュさんとデビュー同期のベテランだ。顔を見て「あっ」となった人も多いようだった。出場するか迷って、5年ぶりに会い、果たした再結成。命がけで臨んだサバイバル。彼らは会場を見渡して「(若いアイドルは)僕たちのことを知らないはずだ」と言ったが、多くのグループは知っているようで、大先輩と言われていた。
「13年間築いてきたチームワーク」という言葉は、ステージがスタートした瞬間、理解できる。披露したのは東方神起の『Mirotic』、審査員も口々に「難しい」と言う曲だ。スキルのベースがないグループがやれば瞬時に崩壊するこの曲とパフォーマンスを23時はあまりにも高いクオリティでやりきった。出だしを担当したのはカラムさん、綺麗なお顔で、素晴らしい歌声。見る人の心をグッと掴む。自分たちの魅力、強み、見せ場を理解し尽くしたステージパフォーマンス。さすが経験値が桁違いだ。審査員も他のグループも終始開いた口がふさがっていない。7つ点灯し次へ進出を決めた。

チーム 10時

このグループは、ここまで取り上げたグループと少し違った理由で言及する。2014年に出場した音楽番組が最後の活動、もとは8人グループ、今回集まったのは4人。メンバーは現在すでにアイドルではなく会社員など他の仕事に就いている。7年を経てのステージ。諦めたくても諦められない、アイドルになる夢をかなえるために挑戦したという。
「最後のステージかもな」と言いながらステージを始める彼ら。ステージはやはり長いブランクを完璧にカバーできるには至っておらず、0ピックで次のラウンドに進出はできなかった。しかし、彼らの挑戦はこの先の人生において必ず糧になる。途中で合流したというメンバーの一人にとっては、最初で最後のステージになった。
ステージを降り、彼らはこう言った。「僕たちのことを気の毒だと思うのではなく、“昔アイドルだった人も頑張って生きているんだ”と見てくれてる気がしました」「一緒だったから楽しかった」そう言いながら、もしかしたら可能性を夢見ていた部分もあったように思う。しかし彼らは、きっと明日からまたそれぞれの仕事に戻っていく。
普通、こういった流れになったシーンを番組では映さないのではないだろうか。『PEAK TIME』という番組ならではだなと感じた。K-POPアイドルは次々と若くて実力のあるグループが生まれ、メディアは取り上げ、ブームがすぎるとまたすぐ次の新しいグループをもてはやす。これはよくTwitterでも言うのだが、人は20代で終わらないし、30代・40代、その先もずっと続いていく。アイドルのスポットライトが当たっているほんの短いあいだしか見ていないわたしたちは、そのことを忘れてしまっている気がした。彼らの人生は続いていく。わたしも同じように、地に足をつけて生きていかなければならない。

チーム 20時

サバイバルラウンド最後のグループ。3人組のグループだが、1人は入隊中で2人での出場となった。現在活動休止中。しかし海外人気が高く、海外でのツアーを多く実施している。ライブ経験が豊富でとても舞台慣れをしている。
彼らが選んだのはパク・ジニョンPDニムの『FEVER』。ステージ経験は嘘をつかない。舞台を楽しんでいるのが伝わってくるパフォーマンスに、デュオだということも忘れてテンションを上げて見入ってしまった。安定した舞台運び、もちろん納得のオールピック。大盛りあがりの会場がそれを裏付けた。
ライアンさんが言ったように、カバーを自分たちの曲のようにものにして披露したグループは彼らだけだったかもしれない。それほど魅力あふれるステージだった。

24時(ソロ選抜)

さまざまな事情でソロで出演を決めたアイドルたち。B.A.Pのジョンオプさんが出ていると分かりザワつく会場。彼のステージは一段も二段も格が違っていた。ダンスでの出演だったが、歌も何もかも完璧だ。ステージ経験が並ではない。見終わったあと、鼻息荒く感想ツイートをした記憶がある。
ヒドさんはスキズの『Back Door』をアレンジして披露、ダンスで出演したヒョンジェさんは、同じくスキズの『MANIAC』を披露し、STAYとしてはなんだか嬉しかった。(この2人はチームに選抜された)
ビョンジュさんはもともと13人グループで、現在は他の職業に就いたメンバーもいるし、他のグループで活動しているメンバーもいると語った。「僕のことを未練たらしいと言う人もいるかもしれないが、かなわなかった夢をあきらめられません」とソロでの出演を決めた。そして「30歳を超えたらきっぱり諦めるつもりです」と続けた。アイドルにとっての見えない壁、30歳というのは進退を決める歳だなと改めて思う。そしてギュヒョンさんが「苦労した人は上手なんだ」と呟いたシーンが印象に残っている。
ひとりひとりがパフォーマンスを披露し、審査員が誰を選ぶかを決めたあとに、ヒドさん・ヒョンジェさん・GONさん・ビョンジュさん・ジョンオプさんで5人グループとなった。

サバイバルラウンドの結果

ここまでで6~7をもらったチームは通過だが、4・5で保留されたチームは審査員の協議の結果、通過・脱落が決められた。

ステージで通過が決定したのは9チーム:2時・5時・7時・8時・11時・13時・15時・20時・23時
保留から通過になったのは6チーム:1時・4時・9時・14時・18時・21時
そしてソロ選抜の24時、合計16チームが第1ラウンドに進んだ。

 

投票ページ

この感想記事を書いている4月6日現在、2nd VOTEが始まっている…というか締切り間際だ。もし締切りの9時までにここまで読んでくださった奇特な方がいらっしゃったら、パフォーマンス動画などをササッと見て投票していただいてもいいかもしれない。英語表記も選べるため戸惑うことはあまりないだろう。

peaktime.jtbc.co.kr

 

(参考)パフォーマンス動画

フルパフォーマンス動画は以下のプレイリストにまとめられている。今回紹介したものも、しきれなかったものもまとまっているので興味がわいた方はぜひ見ていただきたい。

[PEAK TIME] Full ver. - YouTube

サバイバルラウンドでイチオシのチーム8時の『The Real』カバーだけ埋め込みで貼らせていただく。

youtu.be

 

(余談)なぜここまで感情を持っていかれるのか

「いくらおもしろいと言っても、ちょっと感情移入しすぎじゃないのか」自分でもそう思う。なぜ番組を見るまで知らなかったアイドルたちにここまで感情を揺さぶられてしまうのか、少し考えてみた。ここからは完全に個人的な事情のため番組にはまったく関係がないことであると前置きしておく。また、これまでも部分的にブログでは書いてきたことなので新しい情報はない。

『PEAK TIME』を見る中で、なぜ自分がこんなにも感情移入しながら見てしまうのか、ひとつの原因に思い当たった。
わたしが生まれたのは平凡な家庭だったが、あまり裕福ではなかった。もちろんもっともっと苦しい思いをしている人たちがいるという前提で、特に学生時代は「お金がないことで生じる自分ではどうにもできなさ」をずっと感じて生きてきた。
父の自営業の借金が膨らんでいたこと、「スーパーで買い物するお金がない」と母に言われたこと、ピアノやスイミング、公文式、塾、予備校などに一度も通ったことがないこと、小学校6年生のときに父が倒れたこと、持ち家を手放し母方の祖父母の家に身を寄せたこと、幼少期を過ごした思い入れのある(手放した)一軒家があとに入った人が起こした火事で全焼したこと、大学進学を一時は諦めなければならなかったこと、私立の併願は受けられなかったこと、奨学金という借金を背負わなければならなかったこと、アルバイトをいくつか掛け持ちしながら授業料免除を申請して大学に通ったこと……
大学時代に仲良くしてくれていた友人たちは、裕福な家庭の子が多かった。アルバイトを4年間一度もせず、有り余る仕送りをもらい、単位を気まぐれに落とし、それでもわたしよりずっと就活を卒なくこなし、卒業していった。もしくは親のお金で留年をしてプラスの学生時代を謳歌していた。
見返してやりたい、自分は環境に負けるような人間じゃない、そんな気持ちをつい重ねてしまう部分があったように思う。当然、見えていないだけで一見裕福で幸せそうに見える人たちも悩みや苦労を抱えている、ただ、それを理解できるようになったのはもっとあとになってからだった。学生時代のわたしはもがいていた。

彼らはもちろん自分で選び、決断しアイドルになった。だから生まれた環境と比べるのは正しくもない気がするが、自分ではどうにもできないことに対して抗おうとする姿に心惹かれた。負けてほしくない、絶対勝ち上がって欲しい、すべてを持っている(ように見える)人気のある成功したアイドルを実力で打ち負かして欲しい、そう思った。

放送も残すところあと数話。終わってしまうのは寂しいが、チーム8時の日本公演のチケットも確保したし、5月以降であればPEAK TIMEツアーもぜひ渡韓して参加したいと思っている。最後まで全力で彼らの行く末を見守りたい。

aica:PTリアタイ (@aica_ip__) / Twitter

『PEAK TIME』は上記の臨時アカウントで感想をツイートしているのでよければ覗いてみてください😆ここまで長い&拙い文章でしたが、目を通してくださった方がいらっしゃったら、ありがとうございました!