The same Rainbow

LOVE DREAM HAPPINESS を追いかけて

【雑記】K-POPアイドルが音楽番組で1位を取ること:SHINee・KEY「音楽中心」1位獲得で見せた涙

このシリーズをキャリア10年超えのキーさんを対象に書くとは予想もしていなかった。それは1位を取ったことに対して言っているのではなく、1位を取って驚き、言葉を詰まらせ、ステージで涙を見せたキーさんの姿に心が揺さぶられ、書き残しておかねばならないと思ったからだ。そして「私たちが思っている以上にアイドルにとって韓国の音楽番組で1位を取ることは意味があるのかもしれない…」と改めて思った瞬間でもあった。

f:id:kuraxkura:20211010222622j:plain
キーさん公式インスタグラムの投稿より

除隊後初となる約2年半ぶりのソロ活動を『BAD LOVE』(2021年10月3日リリース)でおこなった、SHINeeの万能鍵ことキーさん

youtu.be

2021年10月9日(土)放送の「音楽中心」(通称、ウマチュン)でソロでは初の1位を獲得し、その発表シーンとアンコールステージが話題となった。グループで久しぶりにカムバックを果たした2月にもエムカで1位を取り涙ぐんでいる姿が記憶に残っているが、今回はまた違った意味での涙だったように思う。

固定カムのアンコールステージはこちら

1位候補は3組、必ずしも1位を取れるわけではない。まして相手は8月半ばにリリースした楽曲が驚異の音源の強さでトップ3に入り続けている同事務所のRed Velvetと、こちらもデビューから快進撃を続けているJYPの人気女性グループITZY。発表時の表情そして様子を見るに、キーさんは本当に自分が1位になるとは夢にも思っていなかったような気がする。(追記:見れなかったのだが、退勤時のインスタライブを英訳してくださっている方がいらした。やはり予想もしていなかったと話していたようだ。こちらから)

ウマチュンは音源重視のチャートのため、基本的に音盤売上で勝負をする男性アーティスト・グループが1位を取るのは難易度が高い。Stray Kidsが6冠を取った『소리꾼』では唯一1位を取れず、トップ3にも入れなかった。もちろんリリースのタイミング、競争相手の音源や音盤の売れ行きなどに左右されるため時期が違うものを比べることはできない。それでもウマチュンで1位候補に入り、1位を取ることが簡単ではないことをきっとキーさんもある程度は認識していただろう。
また、Twitterにも書いたのだが、キーさんはノルトでITZYの曲がかかるとダンスをそらで踊れたり、他にも新旧問わず特に女性グループの曲に明るい。さらにNCT DREAMやNCT127といった100万、200万枚とアルバムを売り上げるグループも同事務所の後輩グループとして近しい存在だ。そうして男女問わず若くて勢いのあるグループが次々出てきていることもよく知っているに違いない。勝手な想像ではあるが、点数がすべて表示されるまでは、「1位を取るのはそういう子たちだ」「自分は候補にあがっただけで御の字だ」と言わんばかりのにこにこした表情…からの自身が1位を取ったことを理解した瞬間の信じられないという表情のギャップからも、その想像はあながち間違ってはいないと思う。

2008年にデビューし13年間という長いあいだK-POPの第一線を走ってきたキーさん、そしてSHINeeは、もうベテラン中のベテランであり、憧れよりももっと遠い存在になっている。キーさんはすでに兵役を終えて、日本年齢で言うと30歳を過ぎた。もちろんSHINeeは今でも輝いているし、もう数え切れないほど音楽番組では1位を獲得している。2月の『Don't Call Me』の活動でも6冠を取っていて、その数だけに注目すると“慣れている”と言えなくもない。そんな音楽番組の1位のトロフィーをキーさんはこちらの予想とはまったく異なる様子で受け取った。

キーさんという個人で見てみると、子どもたちには「ノルトのお兄さん」と言われ、アイドルの枠を超えて“バラエティの人”となっている面もある。過去にはミュージカルやドラマに出演した経験もある。
キャリアを重ねていくと、アイドルはアイドルだけの活動に留まらずドラマにバラエティにと幅を広げていくことが多い。それでもこうしてソロで楽曲をリリースし、ラジオや音楽番組に出て、アイドルの活動をしているからには、アイドルとしての“目に見える結果”を得たいと思うはずだ。
会社員とはまったく異なる価値基準や軸で生きている彼らは、何をもって自分の存在意義を得るのだろう?仕事の成果を決まった評価制度ではかったり昇進があったりするわけではない。おそらくだが、報酬に反映されるだけではなく、こういった形の評価を得ることで「自分がやってきたことは間違いではなかったんだ」と認識している部分もあるのではないだろうか。
それが新人やデビューして数年のアイドルだけでなく、こうして10年以上のキャリアを持っている、傍から見たら“成功したアイドル”にとっても決して軽いものではないと今回改めて感じた。音楽番組の1位というのは、(BTSやIUさんなど大衆人気が高く音源点で戦える方々は別にして)タイミングや運の要素もありながら、アイドル本人の頑張りとファンの行動とすべてが合致してはじめて実を結ぶ。事前投票やリアルタイム投票で稼げる点数を馬鹿にできないのは、K-POPアイドルを推している方なら痛いほどに知っているはずだ。そしてスポットライトを浴びることができるアイドルは目まぐるしく入れ替わり、ごく一部の人たちを除いてそこに留まるのは本当に難しい。それはK-POP初心者の私なんかより、音楽番組のMCも務めた経験があり、長年出演しているキーさんのほうがきっとよく知っている。

自分の世界をしっかり持っていて、その個性の強い世界観を妥協することなく私たちに届けてくれるキーさん。「自分がやりたいと思ったこと、表現したいと思ったことを詰め込んだ」と話し、ミニアルバムという形では1stとなった『BAD LOVE』は、CDのジャケットから何から本当にキーさんにしかできないなと思わされるものだった。

ともすると一部のコア層向けになってしまう可能性もあるのに、楽曲は癖の強さ・インパクトもありながら耳馴染みもよくさすがだなぁと(なんか偉そうですみません…)何度も繰り返し聞いた。私はあまりシンセというか、レトロな感じの曲を好まないのだがキーさんのソロは絶対裏切らない。タイトル曲はもちろん、『Yellow Tape』というスタッフさんが一番いいと言ったらしい曲が私も大好きで、カムバ当週はステージも見れて本当にうれしかった。

youtu.be

ここまで語ってきておいてなんだが、実は10/9は三代目JSBのライブに行っており、候補に入ったのは見てかろうじてドーム内でlive votingに参加したものの、1位を取った瞬間はリアルタイムで見ることができなかった。さきほど動画も貼ったが、1位発表ではウマチュンのMC陣3人(私の推しであるスキズのリノくん、キーさんの後輩にあたるNCT 127のジョンウくん、MCの中では一番先輩のミンジュちゃん)、そして候補であるITZYのメンバーがステージに上がっていた。キーさんの動揺っぷりに戸惑ったり心配したりする後輩たち、そして普通は自分たちが1位でないと分かるとサッとステージを降りてしまうのに、ITZYの5人は『BAD LOVE』の振りのポーズをしたりしてずっとキーさんを気遣っていた。キーさんはインスタライブで、ジョンウくんが心配そうに目をうるませるのを見て涙腺がやられたと言っていたようで、やっぱり(特に海外のファンである)私たちが思う以上に重みがあるのかもなぁ……と思うのだった。

SUPER JUNIORオッパや2PM先輩たちのように全員が兵役から戻ってきて、個人活動もありながらグループとしてもステージを見せて、アイドルとして長く輝ける人たちというのはそう多くない。それでもきっとSHINeeもテミンさんが戻ってきたら、その道を歩むのではないだろうか。後輩グループたちが、アイドルとしてのキャリアに希望を持てる、ロールモデルとなる先輩方がこれからもたくさん出てきてくれるといいなと思う。
いつも言っていることだが、人生は長い。人は20代では死なない。20代を死にものぐるいに生きて、仕事を成功させて、人生をまっとうしたという気持ちになっても、30代も40代もその先も訪れる。誰もが成功できるわけではないけれど、今、そして未来の自分も大切にすることをアイドルたちには忘れてほしくない。